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ノーベル賞経済学者ジェームズ・ヘックマン教授 [リサーチ]

5歳までの教育が人生を左右する。
ノーベル賞経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授。
教育経済学があちこちで話題になり、こちらのブログでも何度か取り上げました。
幼児教育が将来にわたって大きな影響をもたらすため、幼児期への教育投資が二重まる、というお話。
就学前児童を対象とした長期に渡る貴重な調査プロジェクトである
ペリー就学前計画のお話は大変有名になったので、皆さんもよくご存知だと思います。


数年前の記事ですが、念のため改めてご紹介しておきます。

■「5歳までのしつけや環境が、人生を決める」2014年11月17日 日経ビジネスONLINE
ノーベル賞経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授に聞く
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20141114/273808/

■「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠 2015年07月02日  東洋経済ONLINE
ノーベル賞学者が教える子の能力の伸ばし方
http://toyokeizai.net/articles/-/73546

●幼児教育の経済学 東洋経済新報社 – 2015/6/19
ジェームズ・J・ヘックマン (著),‎ 古草 秀子 (訳)

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以下、少しふるいですが、
独立行政法人経済産業研究所での2014年のヘックマン教授の講演会での内容の一部です。
大事だと思う所を抜粋しています。(http://www.rieti.go.jp/jp/events/14100801/summary.html)


◆能力の創造に関する最新の研究から得られた8 つの教訓

第1の教訓
多様な能力があらゆる局面において、人生の成果に重大な影響を与えている。
認知力と非認知力のうち、非認知力には、嗜好、自制心、誠実さ、仕事の継続性、多様な社会的やり取りや、経済活動への参加も含まれる。能力の多様性は見逃されがちだが重要である。

第2の教訓
社会経済的に異なるグループの認知力、非認知力の差は、幼少期に形成される。
能力の差は就学前に開き、日本のような先進国では学校教育もこの差を縮めることにあまり役立たない。

第3の教訓
能力の差の出現に対する遺伝の役割。
実証的研究、実験的研究、非実験的研究からは、育児の仕方や環境にも能力を形作る力があることがわかっている。
遺伝も重要だが、遺伝子の発現は、特に幼少期の環境によって修正することができるという研究結果が増えている。

第4の教訓
子どもの発達に重大な意味をもつ、決定的な時期がある。
異なる能力は人生の異なる時期に形成される。
知能指数(IQ)は10歳で同じランクに安定するようになる。
幼少期の恵まれない環境は認知力やその他の成果を方向付ける。
しかし、子どもたちの非認知力は青年期になっても変化しうる。
すなわち、人生の様々な段階で様々なタイプの介入を行う戦略を提言できる。

第5の教訓
子どもたちの置かれた環境にはかなり大きな違いがある。
専門的職業の両親の子どもたちは3歳の時点で、恵まれない家庭の子どもたちと比べて4倍もの語彙を聞いている。
この状況は、子育てのスタイルともあいまって、子どもたちの発達に影響を与える。

第6の教訓
ライフサイクルを通じた復元力がある。
初期の恵まれない環境はその後も影響を与え続けるが、部分的ではあるが社会がそれを償うことができる。
幼少期にネグレクトされていた子どもたちに対する思春期における最も有効な介入は、メンタリング、助言と情報の提供を通じた人格形成、社会的感情能力の形成、人格能力の形成である。
良好な家庭環境で行われていることは、良好な職場環境、職業訓練プログラム、見習い研修プログラムに酷似している。

第7の教訓
「足場作り」の重要性。
子ども、あるいは思春期の青年につき添い、協力し、発達の「最近接領域」と呼ばれる次のステップへ進む意欲をかき立てること。
子どもに説教することは、彼らに関与し、交流することに比べると有効ではない。
この関係においては、子どもと教師(あるいは親)の双方が、システムダイナミクス理論でいうところの「創発システム」によく似た役割を果たす。

第8の教訓
早期投資の重要性。
幼少期に行われる質の高い介入は、能力を促進するうえで有効であり、これは「動学的補完性」の表れである。
今日、しっかりした能力のベースを用意しておけば、明日さらに大きな能力を創り出すことができる。
より高い能力とモチベーションをもつ思春期の子どもたちは学校教育で最高の投資ができる。
能力は早期の投資によって、そしてライフサイクルを通じて創造されるもので、単純に遺伝子によって決まるものではない。


◆能力形成の包括的理解

・能力促進のための有効な社会政策を立案するには、ライフサイクルの各段階で目標とすべき能力について考える必要がある。

・能力開発のために有効な戦略を立案するには、家庭生活、多様な能力、そして能力形成の力学の役割を理解する必要がある。
日本ではOECDの学習到達度調査(PISA)の点数に注目している。しかしながら、能力の経済学に関する最近の研究では、認知力は人生で成功するための要因の一部でしかないことがわかってきた。性格/ソフトスキルや、身体と精神の健康は無視されることが多いが、実は極めて重要である。

・学校、個人、国家が認知力と非認知力の形成を助ける。



◆家庭環境の差異
心理学者たちがアメリカの家庭環境を研究した結果、恵まれた環境の子どもたちはそうでない環境の子どもたちと比べて1時間当たりほとんど4倍近い数の語彙を聞いていることが明らかになった。
また、経済的に恵まれ、教育レベルの高い家庭の子どもたちの方が多くの励ましを受けており、恵まれない家庭の子どもたちはそれほど励ましを受けていないこともわかった。
この結果、3歳の時点で語彙数には大きな差が生じている。

日本では、教育のある母親の方がより頻繁に子どもたちを博物館・美術館に連れていき、本を読み聞かせ、大切な「言葉の風呂」に入れている。


◆まとめー能力は能力を生む

自分たちが、経済学者と社会学者、子どもの発達の専門家の最新の研究を活用しようとしているソーシャル・プランナーだと想像してみよう。

年齢を重ねた時期になって成功できるような能力のベースを形成するためには、出生前や、幼少期を対象にしたプログラムに集中するべきだ。


しかし、恵まれない環境にある人たちのための投資は現在のところ、逆の優先順位で行われている。
必要なのは再分配と矯正だけではなく、予防と事前分配だ。

日本は「人間能力省」を設立するべきだ。

子どものメンターとなり、教え、子どもと付き合うことは、子どものその後の成果を形作る上で大きな役割を果たす。


新たな研究結果の理解が、教育政策に対する私たちの考え方を変えつつある。
大人になってからお金を与えるよりも、子どもたちに前もって能力を分配しておくことが必要だ。
恵まれない状況の家族は、恵まれた親となり、子どもたちの能力を育てられる環境を提供するためのツールを与えられる必要がある。
このような家庭をもっと有効な親に変える政策に比べると、彼らに提供するお金を増やすことは有効な戦略とはいえない。



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