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ノーベル賞経済学者ジェームズ・ヘックマン教授 [リサーチ]

5歳までの教育が人生を左右する。
ノーベル賞経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授。
教育経済学があちこちで話題になり、こちらのブログでも何度か取り上げました。
幼児教育が将来にわたって大きな影響をもたらすため、幼児期への教育投資が二重まる、というお話。
就学前児童を対象とした長期に渡る貴重な調査プロジェクトである
ペリー就学前計画のお話は大変有名になったので、皆さんもよくご存知だと思います。


数年前の記事ですが、念のため改めてご紹介しておきます。

■「5歳までのしつけや環境が、人生を決める」2014年11月17日 日経ビジネスONLINE
ノーベル賞経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授に聞く
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20141114/273808/

■「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠 2015年07月02日  東洋経済ONLINE
ノーベル賞学者が教える子の能力の伸ばし方
http://toyokeizai.net/articles/-/73546

●幼児教育の経済学 東洋経済新報社 – 2015/6/19
ジェームズ・J・ヘックマン (著),‎ 古草 秀子 (訳)

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以下、少しふるいですが、
独立行政法人経済産業研究所での2014年のヘックマン教授の講演会での内容の一部です。
大事だと思う所を抜粋しています。(http://www.rieti.go.jp/jp/events/14100801/summary.html)


◆能力の創造に関する最新の研究から得られた8 つの教訓

第1の教訓
多様な能力があらゆる局面において、人生の成果に重大な影響を与えている。
認知力と非認知力のうち、非認知力には、嗜好、自制心、誠実さ、仕事の継続性、多様な社会的やり取りや、経済活動への参加も含まれる。能力の多様性は見逃されがちだが重要である。

第2の教訓
社会経済的に異なるグループの認知力、非認知力の差は、幼少期に形成される。
能力の差は就学前に開き、日本のような先進国では学校教育もこの差を縮めることにあまり役立たない。

第3の教訓
能力の差の出現に対する遺伝の役割。
実証的研究、実験的研究、非実験的研究からは、育児の仕方や環境にも能力を形作る力があることがわかっている。
遺伝も重要だが、遺伝子の発現は、特に幼少期の環境によって修正することができるという研究結果が増えている。

第4の教訓
子どもの発達に重大な意味をもつ、決定的な時期がある。
異なる能力は人生の異なる時期に形成される。
知能指数(IQ)は10歳で同じランクに安定するようになる。
幼少期の恵まれない環境は認知力やその他の成果を方向付ける。
しかし、子どもたちの非認知力は青年期になっても変化しうる。
すなわち、人生の様々な段階で様々なタイプの介入を行う戦略を提言できる。

第5の教訓
子どもたちの置かれた環境にはかなり大きな違いがある。
専門的職業の両親の子どもたちは3歳の時点で、恵まれない家庭の子どもたちと比べて4倍もの語彙を聞いている。
この状況は、子育てのスタイルともあいまって、子どもたちの発達に影響を与える。

第6の教訓
ライフサイクルを通じた復元力がある。
初期の恵まれない環境はその後も影響を与え続けるが、部分的ではあるが社会がそれを償うことができる。
幼少期にネグレクトされていた子どもたちに対する思春期における最も有効な介入は、メンタリング、助言と情報の提供を通じた人格形成、社会的感情能力の形成、人格能力の形成である。
良好な家庭環境で行われていることは、良好な職場環境、職業訓練プログラム、見習い研修プログラムに酷似している。

第7の教訓
「足場作り」の重要性。
子ども、あるいは思春期の青年につき添い、協力し、発達の「最近接領域」と呼ばれる次のステップへ進む意欲をかき立てること。
子どもに説教することは、彼らに関与し、交流することに比べると有効ではない。
この関係においては、子どもと教師(あるいは親)の双方が、システムダイナミクス理論でいうところの「創発システム」によく似た役割を果たす。

第8の教訓
早期投資の重要性。
幼少期に行われる質の高い介入は、能力を促進するうえで有効であり、これは「動学的補完性」の表れである。
今日、しっかりした能力のベースを用意しておけば、明日さらに大きな能力を創り出すことができる。
より高い能力とモチベーションをもつ思春期の子どもたちは学校教育で最高の投資ができる。
能力は早期の投資によって、そしてライフサイクルを通じて創造されるもので、単純に遺伝子によって決まるものではない。


◆能力形成の包括的理解

・能力促進のための有効な社会政策を立案するには、ライフサイクルの各段階で目標とすべき能力について考える必要がある。

・能力開発のために有効な戦略を立案するには、家庭生活、多様な能力、そして能力形成の力学の役割を理解する必要がある。
日本ではOECDの学習到達度調査(PISA)の点数に注目している。しかしながら、能力の経済学に関する最近の研究では、認知力は人生で成功するための要因の一部でしかないことがわかってきた。性格/ソフトスキルや、身体と精神の健康は無視されることが多いが、実は極めて重要である。

・学校、個人、国家が認知力と非認知力の形成を助ける。



◆家庭環境の差異
心理学者たちがアメリカの家庭環境を研究した結果、恵まれた環境の子どもたちはそうでない環境の子どもたちと比べて1時間当たりほとんど4倍近い数の語彙を聞いていることが明らかになった。
また、経済的に恵まれ、教育レベルの高い家庭の子どもたちの方が多くの励ましを受けており、恵まれない家庭の子どもたちはそれほど励ましを受けていないこともわかった。
この結果、3歳の時点で語彙数には大きな差が生じている。

日本では、教育のある母親の方がより頻繁に子どもたちを博物館・美術館に連れていき、本を読み聞かせ、大切な「言葉の風呂」に入れている。


◆まとめー能力は能力を生む

自分たちが、経済学者と社会学者、子どもの発達の専門家の最新の研究を活用しようとしているソーシャル・プランナーだと想像してみよう。

年齢を重ねた時期になって成功できるような能力のベースを形成するためには、出生前や、幼少期を対象にしたプログラムに集中するべきだ。


しかし、恵まれない環境にある人たちのための投資は現在のところ、逆の優先順位で行われている。
必要なのは再分配と矯正だけではなく、予防と事前分配だ。

日本は「人間能力省」を設立するべきだ。

子どものメンターとなり、教え、子どもと付き合うことは、子どものその後の成果を形作る上で大きな役割を果たす。


新たな研究結果の理解が、教育政策に対する私たちの考え方を変えつつある。
大人になってからお金を与えるよりも、子どもたちに前もって能力を分配しておくことが必要だ。
恵まれない状況の家族は、恵まれた親となり、子どもたちの能力を育てられる環境を提供するためのツールを与えられる必要がある。
このような家庭をもっと有効な親に変える政策に比べると、彼らに提供するお金を増やすことは有効な戦略とはいえない。



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BALアプローチ [リサーチ]

脳科学の知見を、
教育界やビジネス界に有効に活用して行こうという流れが広がってきています。

たしかに、いかなる世界も脳が鍵を握っていることは間違い有りません。
世界は感情で動くと言われて久しいですが、
世界は脳で動く、ということです。


そこで、応用神経科学と言う分野に属するBALアプローチについて最近の動向を抑えたく、
少し整理しています。

BALアプローチとは、
Brain脳、適応Adaptive、リーダーシップLeadershipの3つの要素から構成されています。
日本語で言うと脳適応リーダーシップです。

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『なぜ、あの人に部下はついていくのか〜最新脳科学が明かすリーダーシップの本質』
アレクサンドロス・サイコギオス/ニコラオス・ディミトリディス (著) 大和書房 2017

脳のしくみを知った上でリーダーシップを発揮しようと説いています。
これは、ニューロ・リーダーシップと言われます。

第一の柱ーー思考
第二の柱ーー感情
第三の柱ーー脳の自動制御
第四の柱ーー人間関係

最新の研究成果がふんだんに紹介され、本文の中に多くの代表的専門家の名前と文献が散りばめており、
興味をもった箇所についてすぐに学びを深められるようになっています。
具体的な実験シンプルに分かりやすく提示されていました。
多くは、認知科学、心理学よりの脳研究ですが、これから徐々にさらに面白い知見がどんどんふえて行くのではないでしょうか。

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ところで、
困難で重要な状況に対する遂行能力が高い脳の状態であるフローに入りやすくするには、
どうするのが良いのか、その方法をずっと探っていました。

今回は、フローと創造性に関しての部分を少しご紹介します。


『フローについて』
適切な値のα波が瞑想状態での集中力をもたらし、適切な値のθ波が究極のリラックス状態をもたらす。
この2つの値が適切な値のとき、困難で重要な状況に対する遂行能力が頂点となる。

■フローに入るための内的条件
【より大きな目的】
自分の行動が個人的に抱いている重要な目的に役立つという実感があること。
目的によってやる気を引き出され、心底から積極的且つ情熱的になればなるほど入りやすい。
【高度な専門技能】
専門分野の基本スキルが充分で、優秀であること。アル程度卓越していること。
【不安の軽減】
不安があるほどフローに入りにくい。酷いストレスや過度の圧力は最悪の敵。
最強の組合せである、瞑想状態での集中力、強力な心的報酬、内的動機付けが同時に現れることを妨げるから。

■フローに入るための外的条件
【新たな課題】
直面する課題が日常的でないこと。
日常的な問題には脳が自動操縦モードに切り替わり、習慣を呼び起こし省エネするから。
ワクワク、夢中になるような目新しい要素を含む事。
【ある程度の権限】
権限や裁量権が自分にあること。
これらがなければ最高の自分になるための気力を見出すことはほぼ不可能である。
【重大性】
重大な状況であればあるほどフローに入りやすい。
必要に迫られて、緊迫感、大きな衝撃を感じる中で、フローに入る。


■創造性を発揮するには

創造性を発揮するのは、分析や合理的な思考を司る脳領域(おでこの前頭前野)ではない。
想像力には、脳の実行機能を司る部位の活動低下が不可欠である。
この前頭前野の活動が低下した状態を前頭葉低活性と言い、抑制の低下や注意力の減少、
規範の放棄を招く。
心がより開放的になり、新しいアイデアがより自由に発生する。


アイデアを寝かすのは、この脳の実行機能を静めることと言える。
熟考した後、一旦頭から問題を離すことで熟成し考えが解放される。
脳の他の部位から適切な解決策が提供されることに繋がる。
前頭葉のはたらきを抑制したとき、古典的な脳領域から創造性は生まれるようだ。
データやグラフや表を繰り返し調べてアイデアを出そうと頑張るほど、創造性からは遠ざかる。


■想像力を開花させる方法
ステップ1:理解。情報入手、経験、分析。
ステップ2:探求。寛容な姿勢で話し合い、自由に。
ステップ2a:個別探求。問題の背景に注意を向ける。熟成や一晩寝かせるなども。
ステップ2b;グループ探求。休憩しながら、ストレスを溜め込みすぎない。
ステップ3:意思決定。慌てて実行に移さず慎重に検討する。
ステップ4:実行。アイデアを実行に移すための様々な行動の調整をする。
ステップ5:結果。量と質の両方について、できるかぎりの多くの指標を取り入れて効果測定。
ステップ6:定着。

自分の力でフローをおこす方法が研究されているようですが、
もう少し時間がかかりそうですね。

学校や会社では、フローがおこりやすい環境を整えることが、
パフォーマンスを上げる鍵になるのではないでしょうか。
日本の一人当たりのGDPが低いことがよく指摘されますが、
個人の時間あたりのパフォーマンスが上がれば、組織のパフォーマンスも上がりますよね。

色々な政策の議論も大事ですが、やはり基礎研究、大事です。
そして、その成果を実社会に活かす応用研究ももちろんです。

BALアプローチ、誰にとっても重要だと思います。
脳を持っていない人はいないですし、使っていない人もいないですから。

脳のしくみを今一度知ることからはじめ、
日常生活を見直すと、ひとりひとり、それぞれ再発見があるのではないでしょうか。







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安易に褒めることの危険性について [リサーチ]

ほめるってむずかしいですね。

ほめる、しかるのバランスはどうすればよいのか。。。。
アメとムチの実験は、昔からよく行われるものの一つです。
人だけではなく、サルやネズミを使った多くの実験があります。
基本的には、最もよい学習には、アメだけを与えるケースが正解という見解です。


しかしながら、要注意です。
たいがい、ほめるっていいこと、と安易に考えがちですが、
実は、"ほめることには、大きなリスク"があります。


こどもたちが、内発的動機から、
自分の内面から、やる気を出して、何かに取り組んでいるとき、
その行為をほめたくなるかもしれません。


そこが問題です。
好きで取り組んでいるその行為を安易に褒めてしまうと何がおこるか。

実は、脳内で、自分の行為の意味を書き換えてしまうことに繋がります。

好きで自ら内発的におこしているはずの行為が、
褒められるために行っているというように、意味付けが変わってしまうのです。

『認知的不協和』というものです。


これまで、好きで熱心に取り組んでいたはずのことを、
興味を失ってしまって、最近しなくなった。。。。

そんなことがもしお子様にあれば、

大好きだったあのことをしているお子様に対して、その行為を安易に褒めたことがなかったか、
御確認される必要があるかと思います。


せっかく、興味関心を抱いて、大好きで、自主的に取り組んでいるときには、
その行為に対して褒めることは、きっと必要ないことなのでしょう。

むしろ、妨害になってしまう恐れがあるのですね。


褒めるということも、時と場合を選ぶのですね。
このことは、きっと、大人でも当てはまるのではないでしょうか。

そういう意味で、主体的に内面から湧き出ることで出力されるボランティア活動に対して、
大学や高校等で謎の単位を与えたりすることには、
個人的に、??だと考えています。

みなさまのお考えはいかがでしょうか。

いずれにせよ、お子様たちが興味関心を抱かれて取り組まれているときには、
内面からやる気アクセルがかかっているため(自己強化)、
アクセルを外部から弱めることはしたくはないですよね。

褒めることが、アクセルだけではなく、時にはブレーキになってしまうことの例を、
今回はお話ししました。








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おそるべし珊瑚〜多くの命のゆくえを左右する偉大な存在 [リサーチ]

■珊瑚

・海洋生物のおよそ1/4が珊瑚礁に生息している。
・サンゴの生息に適した海水温は、25-28℃である。

○深刻な脅威に・・・
・減少しつつあり絶滅が危惧される。原因のひとつは海水温の上昇であり、
 最も影響を受けるのは石灰質の骨格をもつ珊瑚。
・サンゴに棲みつく褐虫藻 (共生)は光合成をして、珊瑚に栄養分を与える。
 30℃を超える期間が長いとサンゴから脱け出し、珊瑚は骨格になり白くなって死滅する。
・海水の酸性化も問題。
・気候変動以外にも魚の乱獲も問題。


○津波の防波堤
・津波に対する自然の防波堤となる。
 2004年のスマトラ島沖地震、一部ではマングローブ林とともに
 波を打ち消す役割を果たしたところもあった。


○生き物たちを呼び寄せる
・賑やかな音を発する珊瑚礁ほど、生息する生物が多く珊瑚礁の健康状態が良い。
 珊瑚礁に生息する様々な生物種から発する騒音は、海中の数キロ先まで届く。
 この騒音が、遠いところの新たな生き物たちを呼び寄せ、珊瑚礁にすみつくよう促す。
 賑やかで健康的な珊瑚が、さらに賑やかで健康的になっていくしくみ。

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フィンランド教科書 (生物分野) [リサーチ]

フィンランド国内で最大のシェアを持つSanoma Pro社出版の、
教科書 (生物編) を読んでみた。

■対象
日本の中学校にあたる7年生から9年生

■学習の柔軟性
そもそも学校の学習に対する考え方が大変柔軟な模様。
教科書に縛られないという、教師に多くの裁量が与えられている。
p109より。
国家教育委員会が定めた到達目標を達成するために、新・旧、また他社を含め様々な教科書、
時によっては、大学のテキストを中学校の段階で使用することがある。
これらの対応は、指導する教員に任されている。

■内容
・生体システムとして各システムの相互の関連性を重視しており、体系的に述べられている。
・図表や解剖図と文章の割合では、文章の方が多い。ただし、電子顕微鏡写真はかなり多い。
・どう考えるのか?という問題提起が多く、自分自身の考えを問われる場面が頻発する。
・マインドマップの多用
 p124, 練習問題、タバコと体
 タバコの有害な影響について*マインドマップを作成しなさい。
 *フィンランドの教育現場では、小学校からマインドマップはよく用いられている。
 イメージマップともいう。
 (探Q舎でも積極的に使用)

・いきものを"高度な生体システム"として捉える。
その"しくみ"、その"つながり"、に焦点をあて、命あるものとして生きていけるのは、
このような精巧なシステムが背景にあるのだ!と伝えることに主眼が置かれているようだ。

■日本の教科書との対比
・生物は暗記科目なんかではない。
 日本の中学、高校の"生物"の教科のイメージは、
 物理や化学に比して沢山のことを暗記する科目と捉えられがちだが、
 暗記科目と言うイメージはどこにも見当たらない。

 なぜなのか、"しくみ"はどのようなものか、"つながり"はどのようになっているのか。
 すなわち、ものごとを論理的に、階層的に、体系的に、深く考えることが常に求められる。

・日本の教科書に比べ、情報量が圧倒的に多く、内容も高度で詳しい。
 日本の高等学校の学習内容以上の知識を与えている。
 例えば、人体の骨の構造では神経や血管を通るハヴァース管まで記載されており、
 大学でさえも医学部の人しか習わないのではというような知識もあった。

・タバコの悪影響を真っ向から警告
 p120、5章代謝の呼吸のセクションでは、タバコは呼吸器を破壊することを示している。
 喫煙者の真っ黒の肺の写真を載せており、肺胞がタールで一杯になっていることを示している。

・哲学、道徳的な分野とも関連づけがなされており、深く考えさせられる内容。
 第一章、生命の特徴、生命とは何か?から始まり、最終章、人の一生、幸福な人生とは?で終わる。

・生殖の章では
 「成熟する性」、「責任あるセックス」、「赤ちゃんの誕生」の3章から成り、
保健(日本の高校の性教育?)の分野や、思いやりなど人の尊厳に触れる道徳分野が融合している。

・文章の中に、具体的な数字も比較的多く記されている。
 数字から事実を捉えるだけでなく、文章を読むだけでも映像をイメージしやすくなっている。
 決して、数字を暗記せよということではなく、生体システムをイメージしやすいように具体的な数字を 提示しているのだと推察される。

 例) p113
  毛細血管に関する記述
 「毛細血管の網目は非常に細かく、ほとんど全ての細胞が毛細血管に接している。
  毛細血管の直径は平 均で0.008 mm、つまり赤血球の直径と同じである。
  赤血球は、毛細血管を通るときには一列に並ぶことになる。毛細血管の壁は薄く、
  細胞1個分しかない。・・・」

そして、毛細血管の中で、赤血球が一列に並んだイメージ図は、頁をめくった後に現れる
(ただし、原著はどうか不明。日本語訳の教科書の場合だけかもしれない。)


その他の例)
・200年生きたゾウガメ。イガゴヨウマツは樹齢4000歳以上 
・ハリネズミは体温4℃になって休眠に入る。
・ヒトの卵細胞0.1 mm、その他の細胞、0.01 mm以下
・菌類界、150万種の菌類、30万種類の植物存在、140万種の動物、
・シロナガスクジラ全長30m、重さ135t
・節足動物、現在750,000種類
・軟体動物門、140,000以上の種類

・胚性幹細胞 (全能細胞)200種類以上ある。どんなタイプの細胞にもなることができる。
・ヒトの体にはおよそ230種類の細胞がある。
・ヒトの体には200以上の骨がある。成人200-208個、子ども220個、赤ちゃん300個
・心筋は、自律的に、24時間で10万回以上拍動。
・微笑みは17の筋肉による協働作業、まだ目が見えない子どもでさえ、生後4週間後には微笑み始める。
・消化管の全長7m、食物はほぼ24時間かけて通っていく。
・小腸を広げると200m2ほどの面積になる。
・肝臓の重さ約1.5kg、最大の内臓。
・血液、体重70kgの成人だとおよそ5-6L
・赤血球は、体の中で最小の細胞で、全細胞量の約1/4を占める。
 赤血球の重さの1/3は鉄を含むヘモグ ロビン。赤血球の寿命は約3-4ヶ月。
 毎秒およそ2万個が死滅する。
・心臓は、安静時、1分間に60-70回拍動、1分間におよそ5Lの血液、
 つまりヒトの全血液量が心臓から 送り出される。
・心臓は、ヒトの一生の間に約30億回拍動する。
・毛細血管の直径は平均0.008 mm、つまり赤血球の直径と同じ。
・毛細血管の壁は薄く、細胞1個分しかない。
・肺胞の表面積は成人では75-80 m2
・腎臓はそれぞれ約150gの重さで、膀胱は400-500mLの尿が溜まるといっぱいになる。
・原尿は24時間で180L生成され、尿は通常24時間で1.5-2L。
・皮膚の温度が15℃以下、45℃以上になると痛覚受容器が刺激される。
・ヒトの一生の間に生まれる記憶細胞は約1000万種類になると概算されている。
・皮膚の厚さは3 mmから 10 mmと様々。
・遺伝子が働き、ヒトの生体内では平均4万種類のタンパク質が生産される。

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■少し分かりにくいと感じた点
興味関心をひいたり、日常生活に絡めたりするような問題提起をする反面、
文章と図のリンクが少し弱いと感じた。

ただし、これは、意図的にそのように構成されているのかもしれない。
自らの力で、図と文章の間を埋めるよう、子どもたちに求めているのかも知れない。

実際に、この教科書一冊では、答えが見つからないように、
敢えてそのようにしているのではないかと思われる箇所がいくつかあった。

おそらく、前に記したように、他の教科書を照らし合わせたり、複数の資料を併用したりして、
補うことを促進しているのであろう。

自ら、調べたり情報を探したりすることを推奨するため、
読解リテラシー、情報リテラシーを身につけるため、
たった1冊の教科書に頼りすぎることを避けているようにも思う。
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まど・みちお [リサーチ]

まど・みちお
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熟練 (熟達) による脳活動の変化をみてみよう [リサーチ]

Hill and Schneider, 2006
「The cambridge handbook of expertise and expert performance ,p656」より図を改変


熟達と脳.jpg



この図は、ある運動を学習するために1時間の簡単なトレーニングを行い、
その技術獲得 (熟達) までの脳活動の時間経過を追ったものです。
熟練に伴い、脳の活性化領域が整理されていきます。

左は、トレーニングし始めの脳活動 (初心者)、
真ん中は、中間の脳活動、
右は、技術を獲得した熟練したときの脳活動 (熟達者)、

白い領域は、学習する前に比べて脳活動が増大した領域を示します。
活性化する脳領域は、技術を獲得するにつれ、減少しています。

特に、意識的な注意をコントロールする領域(前頭葉、頭頂葉)の活動が減少しており、
運動技術の獲得がなされると、無意識的にできるようになることを示唆しています。

この結果を学びの段階として捉えるならば、
意識してできる段階から、
無意識的に行える自動処理の段階へと、
さらにステップアップした結果を示しているのでしょう。

同じ運動を行っているにも関わらず、熟達前と、熟達後では、こんなにも、
脳の活動パターンに違いがあるものなんですね。

熟達前は、エネルギーが要りそうに思えてするのが億劫になることも、
熟達後には、いとも簡単に、軽々とできちゃいますよね。
みなさんも、こういう経験を何度もされているのではないでしょうか?

脳では、こういう変化が起こっているのですね。
熟達とは素晴らしいものですね。

この図を見ると、「妙に、納得?!」でしょうか。



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学び、成長のステップ [リサーチ]

脳内のつぶやき。

学び、発達のステップ
他にもあると思うが、ひとまずまとめてみた。

1) 3段階

■知識→見識→胆識 (東洋思想)

→知識  
(話を聞いたり書物を読んだりして習得するもの。
思慮、分別、判断は、単なる知識ではできない。)

→見識 (良識)
(知識に物事の本質を見通す思慮・分別・判断が加わり、意義あるものとなる。
見識を身につけるには、物事を幅広くかつ深く考えることを習慣化すること。
見識は、本当の学問、先哲・先賢の学問をしないとできてこない。
知識に体験や人格が加わり、判断できるようになる。

→胆識
見識に実行力、断行力を伴うと胆識となる。軸がぶれずに行動できる強さがえられる。
実生活の中に、"ほんとうの学問"を練り込むことが重要である。


■守破離 (日本の伝統的な道のきわめ方のひとつ)

→守
指導者、上司、先輩の話を素直に聞き入れ、マネをして (モデリング)忠実に再現して行く段階。
基本・基礎をしっかりと守り、学んだ基本基礎を実践する。
流儀を習い、流儀を守り、理論通り実践することに励む。

難しいことは考えず、疑わず、素直な心が何より重要だと言える。
でなければ、知識も技も入ってこない。頑固であれば、気づきも得られない。
素直さが気づきのチャンスを増やす。素直さが学びの質や効率を高めると言える。

→破
指導者、上司、先輩の話しを守るだけではなく、徐々に破る行為へと繋げる。
自分なりのオリジナルの工夫を加え、指導者から教わらなかった方法を試行する。
試行錯誤を積み重ね、自己流のスタイルに挑戦し、基礎を破っていく。

一通り、基礎基本を習得した「守」の段階を越えて、難しいことを自らの頭で考えることが重要。
あえて、疑うこと。既知の知識情報は正しいのか、このやり方で本当によいのか、もっと良い方法はないのか、研鑽を積む。ひとつの流儀を極めた後に他の流儀と比較検討し、研究を重ねること。


→離
これまでの学びをさらに発展、跳躍させ、自己の世界を創造する。
「守」と「破」の段階を経て、歩んで来た道をふり返り、既知の世界とは違う独自の未知を切り拓く。
研究の集大成の段階。
「守」と「破」とは異なり、「離」の道は、生を全うするまで続く。
創造と進化には終わりがないといえる。


■→気づき→学び→悟り (よく言われるが、出所不明)
こちらは、今回は説明を省略するが、前の■守破離の項で述べたように、
よい気づきがなければ、学びの段階につながらないことを意味する。
したがって、良い学びのためには、
"いかにして気づくか"、"気づきの機会をいかに多く得るか"、と自らに問わねばなるまい。

"気づきを与えてくれるもの"、に素直に接すること。
これが、学びの扉を開く、そう言って良いのではないだろうか。


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2) 4段階

■ピアジェの発達理論
感覚運動期(sensory-moter period, 0~2歳)
前操作期(preoperational period, 2-7歳)
具体的操作期(concrete operational period, 7-12歳)
形式的操作期(formal operational period, 12歳以降)

探Q舎の子どもたちの殆どは、具体的操作期(7-12歳)にあたる。
獲得された知識を相互に関連付け、統合された形で記憶する。
知識を総合活用し、物事を多面的・総合的に捉え、組織的思考、理論的思考を用い課題解決できる。
具体的な事物や状況において、理論的な思考ができる。


●知→聞→意識→無意識 (意識せずとも行動できるようになる)

この、意識している段階から、無意識でできるようになる段階への移行プロセスが興味深い。
一体、何がおこっているのか、
また、改めて脳科学的、神経科学的な知見と、絡めてみたい。


●知→覚→動→考の繰り返し
動く、すなわち行動することが、考えることに先行するということが重要なポイントである。
身体がとった行動を元に、脳が考え、判断する。
脳は、実は身体の意見によく耳を傾け、聞き入れることも多いという。
思考が行動のあとについてくる、という点は抑えておくべき。
子どもたちも私たち大人も大いに活用できる重要事項。


●清水久三子氏の学びの4段階説 (プロの学び力、東洋経済新報社  2007より)
→概念の理解 (知っている、知識)
→具体の理解 (やっていたことがある、経験)
→体系の理解 (できる、能力)
→本質の理解 (見識)

こちらの本は、プロとして価値を産み出す生産性の高い仕事をするための効率的で最短コースの学び方を提唱したもの。
シンプルにまとめられていて思考の整理に役立った。
探究の教材開発、授業の質向上のためのコーディネーター、ファシリテーターとしての仕事に活かせる。
如何に、オリジナルで価値あるものを生み出せるかは常に問い続けなければいけない。
価値あるものとは、子どもたちにとって良い学びを達成するための環境、教材を提供することである。

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3) 5段階


→知っている
→理解している
→やっている
→できている
→教えている


→知らないしできない
→頭でわかっていてもできない (ほんとうの意味ではわかっていない、知行合一)
→知っているが意識しないとできない
→考えなくてもできる(学んだことを無意識レベルで覚えている)
→どこからでも教えることができる (考えなくてもできる状態で意識して人に教えることができる)


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4)6段階

■アブラハム・マズローの欲求段階説
第1  生理的
第2  安全
第3  社会的
第4  尊厳
第5 自己実現
第6  自己超越

「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化。
自身の体験からであろうか、晩年に、自己超越が加えられ、6段階となった点が興味深い。
欲求のおこる順番は、一番から順になるとは限らないため、→は使わないこととした。



知らない → 知る
知る → 分かる
分かる → 行う
行う → できる
できる → 共有する
共有する → 在る

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5) 7段階


→知る
→わかる
→行う
→続ける
→できる
→教える
→成長する


■エリクソンの発達段階論〜ライフサイクル8段階
1:乳児期 (0~1.5歳)   ・・・ (基本的信頼 vs 不信)
2:幼児期前期 (1.5~4歳) ・・・ (自律性 vs 恥・疑惑)
3:幼児期後期 (3~6歳) ・・・ (自主性 vs 罪悪感)
4:児童期 (6〜12歳) ・・・ (勤勉性 vs 劣等感)
5:思春期・青年期 (13~22歳) ・・・ (アイデンテティ vs アイデンテティの拡散)
6:成人期    ・・・ (親密 vs 孤立)
7:壮年期    ・・・ (世代性 vs 自己陶酔)
8:老年期    ・・・ (統合性 vs 絶望)
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日本の品質管理の父 [リサーチ]

石川 馨
■日本の品質管理の父
■日本の化学工学者。工学博士。東京大学名誉教授、武蔵工業大学(現東京都市大学)元学長。
■名言「品質管理は教育に始まり教育に終わる」
■QC (Quality Control )サークル活動の生みの親
日本における品質管理、特にTQC(Total Quality Control、全社的品質管理)の先駆的指導者。
職場内小グループで自発的に品質管理活動を実践することを提唱し、このグループを「QCサークル」と名づけた。
■QC七つ道具*の一つである特性要因図(cause and effect diagram、ishikawa diagram、fishbone diagram)を創案した。フィッシュボーンと呼ばれるこのツールは教育界でも知られ授業で使われることもある。

*QC七つ道具
日本の製造業を世界一の品質にした一番重要な手法。
企業で品質改善活動をおこなうときに最初に学習するもの。
管理を行うにあたり、現象を数値的・定量的に分析するための技法。
可視化により、誰にでもすぐに問題点がわかったり説明を容易にすることを狙っている。

パレート図
特性要因図
グラフ(管理図を含む)
チェックシート
ヒストグラム
散布図
層別


日本の製造業の製品の品質が世界一になったのは、企業全員が、「QCサークル」などで「QC七つ道具」を使って品質改善活動をおこなってきたからと言われる。


ちなみに、定性分析を狙う新QC七つ道具もある。
QC七つ道具 (定量的な現象分析を狙う)に対し、定性的な分析を狙う。
問題の構造を早期に明らかにするのが目的である。

新QC七つ道具
連関図法
親和図法
系統図法
アローダイアグラム法
マトリックス図法
マトリックスデータ解析法
PDPC法


可視化する、分析する、情報を整理する、現状を把握する、
改善するこれらのツールは、は品質改善の分野に限らず
様々な分野で活用できる有用なツールになっている。

どのような世界でも"きほん・きそ"が重要である。
そして、それは、教育に違いない。


もう一度、日本の品質管理の父の名言を、ここに。
「品質管理は教育に始まり教育に終わる」


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絶滅危惧種を知ろう [リサーチ]

自然は好きですか?生き物は好きですか?

もしも、この地球に人間しか住んでいなかったととしたら・・・・
ちょっとつまらない、そんなどころではありません。

生き物があまり好きではないという人も、
植物からは栄養も、植物が産生した酸素ももらっています。
動物からは貴重な命と栄養をもらっています。


今回は、動物です。
好きな動物は何ですか?
みなさん、お好みはいろいろだと思います。
初めて動物園に行った時、最も衝撃を受けた動物はなんだったでしょうか?
ライオン、ゾウ、チーター、パンダ、それともキリンでしょうか?


今回は、絶滅危惧種 に関してです。

絶滅とは、文字通り、
地球上から生物の種がいなくなってしまうこと。

【絶滅危惧種について】

2016年秋のデータによれば、
世界の野生動物の数が1970年時と比べて58%減少したと推計された。

ロンドン動物学協会(ZNL)と世界自然保護基金(WWF)がまとめた報告書「生きている惑星」は、
現在の傾向が続けば、
脊椎動物の数は2020年に3分の1になる可能性があると警告している。
推計によると、湖や河川、湿地帯に生息する野生動物の減少が最も激しいという。
生息域の縮小、野生動物の取引、汚染、気候変動など人間活動によるものが原因だとみられている。

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自然保護に関する世界最大のネットワーク、IUCN(国際自然保護連合)。
2016年12月、IUCNの絶滅危惧種掲載リスト (レッドリスト)にキリンが加えられた。

陸上動物で最も背の高いキリンの生息数は1985年では、およそ15万5000頭
いたものが、2015年にはおよそ9万7000頭まで減少した。
これまでは、軽度懸念になっていたが、過去3世代のうちに生息数が3割以上減少したことにより、
2016年「絶滅危惧2類」に引き上げられた。

専門家によると、
サファリに出かければキリンはあちこちにいるため、これまでキリンは注目されなかったという。
しかし、実際には、あまりに短期間に激減したという。


最近の研究では、キリンは4つの異なる種で構成されている可能性があると分かっているが、
種類によっては、400頭まで減っていると言う (2016年12月現在)。

原因はいくつかあるが、人間の影響がほとんどである。
密猟、人の侵入による生息地の縮小、戦乱の影響 (兵糧になる)など。

トラ、ゾウ、サイ、ウミガメ、パンダ、ホッキョクグマ、オランウータン
などは、よく知られている絶滅危惧種だが、
キリンは認知度が低いという。

親しみのある動物は、数が多いと錯覚される危険性がある。
専門家であっても絶滅危機にある状況を見過ごしがちになってしまうという。
多くの動物が気づかれぬままに絶滅へ向かうスピードはおそろしく速い。


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2016年9月現在
レッドリストには、最も絶滅の恐れが高い3つのカテゴリーに、
2万種以上の野生生物が記載された。

動物  12,316種
植物  11,577種
その他    35種
合計  23,928種

ほ乳類、鳥類、両生類の研究が比較的進んでいる。
魚類や無脊椎動物などは調査が充分ではない。
調査が進むにつれ、絶滅危惧種は激増するであろう。

ほ乳類 ・・・存在が知られるほ乳類は約5,500種のうち、1,208種・・・20%以上が危機
鳥類 ・・・存在が知られる一万余種のうち、1,375種・・・10%以上が危機
両性類 ・・・ 存在が知られる約7500種のうち、2,063種・・・25%以上が危機


一説によると、年間約4万種の野生生物が、人間が原因で絶滅しているという。
地球の歴史上、第6回目の大量絶滅が非常に速いスピードで進行している。

(過去5回の大量絶滅の原因の多くは、
地球環境の変化や、生物同士の生存競争によるものである。)





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