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「禅と生きる〜生活につながる思想と知恵 20のレッスン」 [読書]

「禅と生きる〜生活につながる思想と知恵 20のレッスン」宇野全智 著 山川出版社

日本人はもちろん外国人の旅行者まで一般の人を対象とした座禅、写経、宿坊体験が行われている。

有名な経営者では、アップル創業者スティーブ・ジョブズ氏、京セラ創業者で、JALの再建に力を尽くした稲盛和夫氏、パナソニック創業者の松下幸之助氏など。
禅の思想が、個人の人生のみならず、その企業の経営方針に大きく影響を及ぼしてきた。
最近ではグーグル、インテルをはじめとして、世界規模の企業が、研修プログラムに禅を取り入れることも珍しくなく、ビジネス誌にも禅の特集が組まれる。
日本に限らず、世界の中に座禅や禅的な考え方に関心を持ち、それを実践する人が増えている昨今。
禅 (ZEN)も世界共通語になりつつある。


日本でも、行政が主催するイベントや研修会で禅の思想が取り上げられることはもはや珍しいことではない。一般的に「禅」は、宗教的な要素は薄れており、ひとつの宗派のものではなく、広く日本の文化や伝統芸能、茶道や華道、剣道、柔道などの根底にある価値観だと捉えられている。
地域の子ども達や婚活イベントにも座禅体験や写経体験が取り入れられることもしばしばある。



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そういうわけで、今回は曹洞宗の禅僧の著書を紹介する。
山形県 地福寺副住職、宇野全智氏
理学部生物学科卒業。
曹洞宗の教えを一般の人に分かりやすく伝えるために活動する1973年生まれの著者。
曹洞宗の布教師養成機関修了後、大本山永平寺で修行。
研修会講師などを務めるなど布教活動以外にも、自死遺族の支援や被災地支援にも積極的に関わる。


禅をしらないビギナーの方にとって、非常にとっつきやすい内容となっている。
入門編のさらに入門編といった感じで、さらっと書かれている。
"禅"に関心のある方に、どんなものかちょっと触れてみようという方に、お薦めする。
著者自身の永平寺での実際の修行の様子や日課も詳しく説明されている。

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以下、現代の教育界の現状を踏まえ、とりわけ教育に役立つと思われる箇所を紹介する。

p32 仕事と修行は表裏一体

道元禅師『典座教訓』より
喜心、老心、大心の3つの心構え

『喜心とは、自分の為した務めが誰かの役に立ち、自分の存在が誰かの生活を支えていること、
そうした巡り合わせで仕事ができる喜びを感じること』
『老心とは、老婆心ともいい、老婆が孫を思うように、親が子を思うように心を尽くし、
相手を思い、仕事にあたること』
『大心とは、大きな山のようにどっしりとした、偏ったり固執したりしない心をもつこと。
浮かれも落ち込みもせず、物事を俯瞰し、成功も失敗も一つの景色の中に一緒に捉える心をもつこと』


p141

『雑宝蔵経』(1500年以上も前に作られたお経)
「無財の七施」

眼施 眼差しを施す。
和顔施 (わがんせ) 笑顔を施す。
語施(ごんせ) 言葉を施す。
身施(しんせ) 行いを施す。
心施 (しんせ) 心を施す。
床座施(しょうざせ)座席を施す。
房舎施(ぼうじゃせ)泊まる場所を施す。

p156
道元禅師 『正法眼蔵』 「弁道話」より
「放てば手に満てり」
「無所得・無所悟」の座禅
手放すことによって手に満ちるものがある。
求める心を離れた時にこそ、結果的に手に満ちるものがある。

p218
釈尊(ブッダ)の最期
弟子達に残した遺言

「私を灯火とするのではなく、みずからを灯火としなさい」
教祖としての私ではなく、自分自身を頼りにしてしっかりと歩んで行きなさい。

「すべては壊法である、怠ることなく精進しなさい」
壊法とは「今は正しいことでも、いつかはそれが変わるかもしれない」という意味です。

p219
禅の世界には「殺仏殺祖」という言葉があります。
仏に会っては仏を殺し、仏祖にあっては仏祖を殺す

仏教の根本には、「無常」という教えがあります。

p220
釈尊の遺言は、最後の段階で、自分の教えですら確かなものであり続けるのかはわからないと、
「自己否定」の要素を残すものとなりました。
しかし、この姿勢こそ仏教の目指す「揺れ幅の価値」を担保しているのだと言えます。

揺れてもいい。迷ってもいい。
それらすべてが自分自身にしなやかな強さを与えてくれるのだと受け止めることができた時、
人間の「強さ」の意味や基準が、今までとは違って見えてくるはずです。


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●「喜心、老心、大心の3つの心構え」
●「無財の七施」
●「すべては壊法である、怠ることなく精進しなさい」
●「諸行無常」
●「私を灯火とするのではなく、みずからを灯火としなさい」
●「殺仏殺祖」
●「揺れ幅の価値」と「強さの意味」を再確認

これらの思想を、教育改革の主たるテーマに当てはめてもう一度見直すと、
より視界がクリアになることが容易に理解できるだろう。
歴史ある禅の知恵は、いたるところで活躍してくれる可能性をもっている。
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