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「未来の学校〜テスト教育は限界か」 トニー・ワグナー著、陳玉玲 訳 玉川大学出版部 2017 [読書]

「未来の学校〜テスト教育は限界か」 トニー・ワグナー著、陳玉玲 訳 玉川大学出版部 2017

訳者の陳玉玲氏が、2013年に偶然ニューヨークの書店で本書を見つけ、翻訳されたものである。
2008年に刊行され、2014年に「5年後ー最悪の時代と最良の時代」が付け加えられ再び出版された。
2017年5月25日に初版として日本語版の本書が発表されている。

したがって、内容は2008年の時代のものであるが、問題の本質は変わらず、日米の学校教育事情は
非常に共通点が多いため、日本の学校教育を考え直すための重要なヒントを多く与えるものである。

本書は、公教育、民間教育に関わらず全ての教育関係者は言うまでもなく、
お子様をお持ちの保護者さん、
良い仕事をする若手社員を求めるビジネス界のリーダー達、
そして、志高い、生涯学び続ける全ての人々に読んで頂きたいおすすめの一冊である。


今の時代、"探究型の学習"が、なぜこれほどまでに求められるのか、について明確に回答されているので、"探Q舎の授業"にご興味ある方にも、ぜひ読んで頂きたいと願う。



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21世紀の世界を担う子どもたちに求められる能力とは何か?そのため公教育は何を与えるべきか。
著者は、教育の本質的な問いに真っ向から向き合い、解答を探究している。

●これからの時代に求められる力
各方面で偉大な業績を上げるビジネスリーダーたち、大学教授たちへのインタビューを行ったところ、彼らが口を揃えて若者達に求める資質は、専門的知識や技術ではなかった。
今日最も重要なスキルについて尋ねると必ず"好奇心"、"探究心"が上げられる。
「的を射た質問をする能力 (論理的思考力)」
「他人と対等に議論する能力」、
「多相互依存し協調することで仕事を達成する能力」。
 
これからの時代、知識労働社会において、ホワイトカラー、ブルーカラーに関わらず、
論理的思考力や課題解決能力が、いかなる労働者にも求められる能力なのである。
必要でない人間は一人もいない。
また、ダニエル・ピンクの「ハイ・コンセプト-新しいことを考え出す人の時代,2006年」では、想像力、創造力、共感の能力が支配的になるという。
創造性に関しては、世界中の調査において、最も求められる力として常に挙がっている。

一人で遂行できる仕事はなく、全ての仕事はチームで成し遂げられるものである。もはや、中間管理職の重要性は消えつつあり、全ての労働者が、自分の頭で考え、問題発見、課題解決を行う能力が求められている。誰も方法や答えを教えてはくれない。


P129、 21世紀にあって最も重要と思われる厳しさとは、労働、市民生活、生涯学習に必要な核となる能力を身につけていることである。学問を学ぶことは、能力を向上させる手段であって、それ自体が目標ではない。どれくらいしっているかではなく、知っていることで何ができるかが重要である。


●P77、これからの時代を生き残るための7つのスキル
(これまでの時代の3Rs(読み書き計算)にとって代わる)
1) 論理的思考力と問題解決能力
2) ネットワークによる協力と影響力によるリーダーシップ
3) 機敏性と適応能力
4) イニシアティブと起業家精神
5) 口頭及び文書による効果的なコミュニケーション能力
6) 情報にアクセスし分析する能力
7) 好奇心と想像力


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●時代遅れの学校教育
ところが、社会の急激な変化に学校教育の世界は全くついて行けていないのである。
アメリカもどこかの国と全く同じ状況であるらしい。。。。。。
現在学校で教えられている内容と、グローバルな知識経済を生き抜ける能力との間に、
大きなギャップがあり、知識詰め込み型教育及び暗記力をひたすら試すというテストから脱却できていないという。

これからの子ども達にとって必要な教育はどのようなものか。
優れた授業とはどのようなものか。
定義は?
P63、優れた授業とは、全ての生徒が全ての授業において前向きに取り組んでいること。


●学習に対する動機付けと良い授業を模索する〜現在の子ども達の生態を踏まえて
デジタル世代。
1つのことに集中するすることは滅多にない。
他者との関係を切望する。
即時の満足 (我慢しなくなり、要求も多くなり、待つ事ができない。
長時間の読書や長文の指示を拒否する。空間認識力は強い。視覚から学ぶのが得意。尊厳を渇望している。腹を割って話せる大人の相談相手が欲しい。親からのストレスは要らない(ヘリコプターペアレント)


●人が働き、勉強をする理由は?
マッキンゼー&カンパニー
マイケルユング
人間が働く、あるいは勉強をする理由は3つのみ。
1) 必要性、脅迫、圧力 (生理的欲求)
2) 習慣の転移 (社会の規範と伝統的な慣例によって形成される習慣、社会の規範を守ろうとする思い
3) 興味、欲求、熱意(情熱)などの”引きつける力”、自身の内からの原動力

●探究学習の重要性
現代の子ども達には、困難な課題に取り組む機会がないという。
そして、相談相手となる大人の存在の有無が、生産性ある困難な課題の達成の成否を決定する。

→探究の核心は、困難に直面することにあり、
問題を提起することは、問題を解決することよりも重要である。
(アインシュタインの知識よりも想像力が重要である。という名言に等しい)

先進的な学校で行われる探究型の授業を見学した専門家は・・・?
弁護士曰く、「法的な分析みたいです」
エンジニア曰く、「クリティカル・パスの実践そのものです」
科学者曰く、「科学的方法です」
いう。


●先進的な学校は、着実に高い学習効果を生んでいる〜暗記もテストもせずに
Q) 優秀な教員をどのように評価しますか?
A) 生徒が成し遂げた学習の質から判断する。授業や評価も外部に公開。専門家にも評価を依頼。 by 先進的な学校の校長
学習評価のあとのフィードバックも徹底されている。
お手本や、不十分な学習例を生徒に公開し、学習を促進させる。

教師は常にチームで動く。

3つの先進的な学校の共通点
1) 学習と評価中心
・継続して学び続ける能力
・研究能力
・文章力、
・コミュニケーション能力(口頭、文章)
2) やる気、学習の動機づけ
・学内外の大人との近しい関係
・疑問や興味を掘り下げる機会が、学習への強い動機づけへ
・一人一人に合わせた実践的な学習〜プロジェクト、議論、実習、論文などに一人一人の生徒の声を反映
3) 学校の責任と教員の向上
・現実社会で生徒達が成し遂げることを究極の成果とみなし、その後の経過観察を行い、学校がその情報を教育プログラムの改善に役立てる。
・学校の洗練した体制と、仕事のやりがいが教員の継続的な向上へ直結するしくみ
4) 透明性の高い体制
・小規模の学校かつ、少人数制→一人一人に適した学び
・ペアやチームとしての教員—生徒の担当制 (数年間の強固な関わり)→強い愛情と責任感
・授業公開、評価公開。→保護者、専門家、地域の人々の理解、協力、支援
・評価もテストではなく、公開制の多角的なパフォーマンス評価 (第三者評価あり)。
プレゼン、ポートフォリオ、自由研究、論文、長期のインターン、実習。

疑問や興味を掘り下げる”探究型の学びの機会”を提供することが、学習への動機づけとなる。

探究型の学習により、一人一人の興味関心を深め、深い学びを!!
探究で、ぜひ産みの苦しみを体験し、乗り越えよう。
創造とはそういうことである。

その先に、創造が生まれる。
イノベーションが生まれる。
自身へ、会社へ、地域へ、社会への貢献につながる。
7つのスキルが身につき、一人一人の能力が最大限に発揮され、社会に貢献することができる。



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