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「やればできる!」の研究:キャロル・ドウェック教授 [読書]

マインドセット研究のパイオニアとして知られるスタンフォード大学心理学教授
キャロル・S・ドゥエック博士をご紹介します。


●TEDトークがありますので、ご興味ある方は、ご覧下さい。
10分間程度です。
キャロル・ドウェック: 必ずできる! ― 未来を信じる「脳の力」 ―TED 日本語字幕付き動画
http://digitalcast.jp/v/21991/

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●著書 「やればできる!」の研究  キャロル・S・デュエック 草思社

こちこちマインドセットからしなやかマインドセットへの転換のススメです。

能力や才能の問題ではなく、学習曲線を描く成長、発達の途上段階に自分がいるのだという事実をしっかりとイメージできるようにサポートすることが、教師にも保護者さんにとっても大切なことですね。


■10歳の子どもたちにパズルへの挑戦姿勢の観察。

かなりやさしいパズルを解いたあと、かなり難しいパズルの課題を出すと、
子どもたちの心理状態はどのようになるか調べた。
しなやかマインドセット (成長型マインドセット)の子どもたちの発言。
I love challenge!
なかなか解けない問題ってぼく大好き!
このパズルをやると頭がよくなるよ、きっと。

成功、失敗の2グループ以外に、つまづきそのものを楽しむ人種がいるという事実。


■p72.しなやかマインドセット (成長型マインドセット)にするには・・・
教育の効果は大変大きい。

例えば
「能力は伸ばすことができます。この問題にチャレンジすれば頭がよくなります」と教える。
しなやかマインドセットの偉力を伝える科学記事を読ませたりする。

その人は、マインドセットがしなやかになって、少なくともしばらくの間は、
しなやかマインドセットの人と同じ行動をとるようになる。

■p94. 映画落ちこぼれの天使たち〜しなやかマインドセット教師の実話。
ロスの最低レベルの高校に赴任してきた高校教師ハイメ・エスカランテは、
ためらうことなしに大学レベルの微積分法を教えはじめた。
数学レベルを全米トップまで引き上げた。


■P172.こどもがすばやく完璧に数学の問題を解いたときはどのように対応する?
「あら、簡単すぎたようね。時間をむだにさせちゃったわ。
今度はもっと実になるものをやりましょう」


■P179.父と息子の会話例
14歳息子: あーあ、ぼくってほんとにドジなんだ。
父:釘をばらまいたからって、そんなことを言うもんじゃない。
息子:じゃあ、何て言うの?
父:釘をばらまいちゃった。拾って集めよう。そう言えばいい。


■P198、しなやかマインドセットのすぐれた教師のやり方
・知能や才能は伸ばせると信じており、学ぶプロセスを大切にする。
・すべての生徒に対して高い基準を設けると同時に温かい雰囲気で包み込み、よりそう。
・いかにして高い努力目標に到達できるかをきちんと生徒に伝える。
・教師は何を教えているのか〜
勉強を好きになること。
自分の力で学び、自分の力で考えられるようになること。
基本をおろそかにしないこと。
・教師自身が学ぶことが好き。


■P228.マインドセットのワークショップの効果は絶大である
「脳は、筋肉と同じく、使えば使うほど性能がアップするのです。
新しい事を学ぶと成長して、頭が良くなっていくことが科学的に証明されています。」
そして、学習や経験によって神経回路網に新たな結合が生まれ、
脳が成長して行くようすを話してきかせる。

「あなたは自分の脳の世話係なのよ。正しい使い方をすれば、脳の成長を助けてやる事ができるわ。」
自分の脳は自分で創っていくものだという気持ちを植え付ける。


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加古里子 (かこさとし) 先生〜偉大なる表現者、創造者,研究者、探究者 [読書]

以前にも加古里子先生の素晴らしい絵本「人間」をご紹介しました。

有名で人気の絵本作家なので、ご存知の方の方が多いかと思いますが、
念のためもう一度ご紹介します。


加古里子先生の公式HP
http://kakosatoshi.jp/profile/

絵本作家、児童文学者、工学博士、技術士(化学)です。
創造性、表現力が半端なく驚異的です。
素晴らしい作品がたくさんたくさんあり、偉大さを感じずにはおれません。
質も量もとことん追求され、若い頃からず〜っと走り続けて今もお元気で大活躍中。


先生は、きっと探究者の中の探究者、表現者の中の表現者だと思います。
研究者でいうと、超一流雑誌に立て続けに毎年毎年論文発表するようなことなので、
正直申し上げて、言葉がでないくらいスゴいんです。
なかなかそのような人はいないように思います。


絵本を読んでいると、絵本の中に、大きな大きなスケールを感じさせるこの世界を表現されながらも、
一方では、どこまでもどこまでも精巧に描かれているので、驚愕します。
言葉の一語一語の中にも、また、絵の細部のもっと細部の米粒くらいのほんの一部の中にさえも、
とても密度の濃いものがたくさん詰め込まれていることが伝わってきます。
絵本の端っこにいる小さな小さな部分でさえ、味わいたくなります。
一人の人間の絵の、一人一人の表情や手の指の感じまで。

人間、自然、この世界の面白さ、不思議さ、素晴らしさが作品から伝わってきます。
そして、それだけではなく、もっと奥深いところでの伝えたいこと、
というものが底なし沼のようにそこに詰め込まれていることに気づきます。
先生自身の人生観、子どもたちへの熱い想いが溢れるくらい詰まっているのでしょう。



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加古先生の人生を、ほんの少しだけ覗かせていただきましょう。



以下、HP (http://kakosatoshi.jp/blog/cat_blog/ご挨拶/) より引用させて頂きます。
「幼少期を豊かな自然の中で小魚やトンボを追いかけて育ちました。かこはこの頃の遊びの体験がかけがえのない貴重なものだった、と述懐しています。」

「小学校に上がると文章を書いたり絵を描くことが好きになり、東京の高校に進学すると国語の先生が俳人、中村草田男だったこともあり、俳句や詩にも興味をもつようになりました。」

「東京大学工学部へ進学しますが、時代は戦争一色となり、授業どころではない状況となります。
終戦をむかえた19歳のかこさとしは、食べるものもない焼け野原で物質的な貧窮のみならず、
戦前からの価値観の大転換に大きな戸惑いを覚えたといいます。
これからどうやって生きてゆけばよいのか、何を信じてゆけばよいのか、大いに悩んだかこは、答えを求めて大学でも工学部以外のいろいろな学部の授業に潜り込んでは授業を受け、その答えを模索する毎日を送っていたといいます。」



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運命の出会いのひとつでしょうか。

6歳のとき、小学校の担任の先生から、"心に残る教育"をうけられたそうです。
心に残る教育、きっと大きな励ましのようなものではないかと想像します。
お目にかかって、インタビューしてみたいですね。


小学校の先生って、子どもたちの人生へ強い影響を与えるようですね。
多くの偉人たちの探究をしていると、必ずといっていいほど、
"忘れられない心に残る小学校の担任の先生がいる、という話しが出てくるんですよ。
教師の子どもたちへの人生への影響力を思い知らされます。
たった一言が、こども達の人生を良くも悪くも変えてしまうこともあるのでしょうね。

一方では、幼少の頃、加古里子先生の本に出会って、
科学が好きになってそのまま科学者になった人がいるんですよ。

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なんと今年、91歳だそうです。
うまれ故郷の福井県越前市には、2013年からふるさと絵本館が開館しているそうです。
福井を訪ねることがあれば、ぜったいに訪ねたいです。

これからも、お元気で素晴らしい作品を発表していただきたいです。
探究っ子たちとともに、先生の作品から多くを学びます。
良い作品をたくさん創っていただき、ほんとうにありがとうございます。




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「世界最高の学校経営 the FIRST DAYS OF SCHOOL ―How to be an effective teacher 」 [読書]

「世界最高の学級経営 the FIRST DAYS OF SCHOOL ―How to be an effective teacher 単行本 – 2017/4/7  ハリー・ウォン (著), ローズマリー・ウォン (著), 稲垣みどり (翻訳)」

世界で400万冊以上、売れているベストセラー。
著者は、アメリカの元教師の夫妻である。
アメリカの学校の授業をよりよくすための技法を詳しく紹介している。
日本の学校でも実践できることは多いが、これは国の事情が異なる(授業中の子どもの態度など)ので違うのではないかと思う箇所も多かった。
教師に一言いいたいだけでも言葉を発してはいけないなど、
効率を究極的に重視されているあまり、息がつまらないのか少し心配なところもあった。

学校の先生向けに特化して授業をいかに生きたものにできるかは学級経営にかかっていることが
これでもか、これでもかというくらい書かれていた。
どれだけ学びを達成できるかは、一年間の学級作りにかかっており、
それは学級開きの2週間の成否にかかっているということには同意する。

実践のための具体的なガイドなので、とりわけ新任教師にとって大変参考になる先生向けの教科書だと思う。指導計画の立て方、評価書の作製法、ノートの取り方まで、グループ分け、座席の配置まで詳しい説明があった。

また、少しお疲れ気味だったり、何かを変えたいと思われている先生方にも読んでいただいて、
もう一度、パワーと、ある種特別な教師という職業の高き誇りをを取りもどしていただけたらと願う。

■子どもの学びの達成を実現する、その唯一の要素は教師である。
教育改革でもなく、カリキュラム変更でもなく、教師である。
変えることができるのは唯一教師のみであるということ。

■教育において、最重要の資源は、"教師"である。
教育の向上、学びの達成においてコスパが最高なのは、教員養成にこそ資金を投資することである。
(ジョングッドランドによるUCLAの研究、40年間にわたる教育アイデアの考察)

この2点を知ってもらうために、
文科省、校長先生、教育関係の地方公務員の皆さんにもぜひ読んでもらいたい。


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◎“成果を上げる教師"の特徴”
1 子どもの成功に対して「前向きな期待を持つ」
2「学級経営が素晴らしい」
3「授業を極める」の具体的手法を知っている


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◎教師の指導の4段階
1. 夢想する
(新任教師、楽しく学べばそれでいい、授業の目標が曖昧)
2. やり過ごす
(やらせることを探す、学習成果ではなく、子どもの課題やカリキュラムにとらわれる、労働者的)
3. 熟達する
(子どもに大いに期待していることを伝える、
4. 子どもを変える
(人生を変える、卒業して何年も経ったとき突然教え子が会いに来てくれ教え子からお礼を言われる、本当の意味での"師")
5.4.の段階を経て、再び夢想の段階へ
(子どもの人生を変えるという理想や夢を追い求める。教師自身も学び続け変わり続ける。)


◎成果を上げる教師 (リーダー)の10の性質
1.達成のビジョンがある。
2.いいお手本となる。
3.同僚を導く対人関係のスキルをもつ。
4.共通のゴールに向かって人を動機付け、鼓舞する。
5.ゴールに集中する。
6.締め切りを決め、中間目標を達成する。
7.個人同士、グループ同士の対立を仲裁する。
8.きとんとした知識や技術が重要だと考え、トレーニングを推進する。
9.情報を共有し、若く経験の少ないチーム・メンバーのメンターとなる。
10.準備が万全で、情熱的かつ粘り強い。

◎成果を上げられない教師はみんな同じ。
◎成果を上げる教師はみんな違う (各々が独創的)。

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●グループ活動の効用
教育テストサービスの調査結果
全国的な学力調査報告書のデータ (14000名の中学2年生)
数学と科学のテスト結果の分析をすると、

授業で、教師が実践的なグループ活動を行っている子ども達の成績は、
そうでない子どもたちより数学で約70%、科学で40%上回っていた。
(Wenglingsky, Howard, 2000)

●良い指示には、学びを確かにする点において、子どもの家族のバックグラウンド、収入、人種、性別等の要因より15〜20倍もの効果がある。
(Hershberg,T., 2005)


●逆向き設計という授業計画
達成すべき結果から、計画を始める
step1) 望む結果を決定(何を知ってもらいたいか、何ができるようになってもらいたいか。)
step2) 認識できる証拠を決定 (これはテストとなる。子どもたちが目標を習得したかどうか。)
step3) 学びの体験と指示を計画(どのような活動、資料を使って子ども達の学びへの手助けができるか。)
(Wiggins, G. and J. Tighe, 2004)




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「TOK(知の理論)を解読する ~教科を超えた知識の探究」 [読書]

TOK(知の理論)を解読する ~教科を超えた知識の探究」
Wendy Heydorn (著), Susan Jesudason (著), Z会編集部 (編集) 2016.3.10


国際バカロレア (IB)のお話しは「国際バカロレアとは」というタイトルで3月18日に取り上げました。
今回は、そのIBのディプロマプログラムにおいて中核となる学習である
TOK(Theory of Knowledge:知の理論)の教科書を読んでみました。
クリティカルシンキング (批判的思考、分かりやすくするため、的確な質問をできる力というように言う人たちもいます)を体系的に培う学習として広く注目されています。

この本は、“Decoding Theory of Knowledge"の翻訳書であり、
学生向けの教科書?解説書?なのですが、
なかなかに読み応えがあり、出会って良かったと思える本です。

タイトル通り、"知とは何か" について真っ向から向き合っています。

近い大学入試改革でも求められる教科の枠組みを超えた『思考力・判断力・表現力』」伸ばす学びを
探究するために、とても参考になるガイド本であると思います。

IB教育とは直接関係なくても、"学びとは何か"を追究しています。
学校の先生方の皆さんも、
未成年のお子様を子育て中の親御さんも、
学び直したい大人のみなさんも、
パラパラっと目次を覗くだけでも、得られるものがきっとあると思います。



微力ながら教育に関わる一人の人間として、
徐々に教育の世界がより良い方向に変わりつつある世界の流れを感じることができ、
今後の可能性を多く含んでいる励みとなる本でもありました。

日本の教育の質を向上するにあたり、読んでみる価値がある内容です。
国際的な視点を持って、学びの本質を徹底的に問いなおすことが求められているのではないでしょうか。


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「HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント」 [読書]

HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント)
人を育て、成果を最大にするマネジメント   
アンドリュー・S・グローブ (著), ベン・ホロウィッツ (その他), 小林 薫 (翻訳)

インテル元CEOが、後進のために精魂込めて書き下ろした傑作。
ベン・ホロウィッツ(『HARD THINGS』著者)、マーク・ザッカーバーグなど、
経営者や幹部たちに読み継がれ、絶賛されつづけてきたマネジメントの指南書。

仕事のアウトプットを最大化するには・・・・


企業に勤めているわけではないが、自分にも役立つ情報が満載だった。
技巧的な例えや分かりやすい図が示されており、理解しやすく内容にも説得力があった。
また、会社における会議というものについて丁寧に掘り下げてあった点が印象的だった。
ここまで詳しく書かれていた本をこれまでしらない。

企業の仕事のアウトプットも元々は、社員一人一人のアウトプットに起因するので、
最後の方には、社員教育についても言及があり、非常に有益な情報がえられた。

業績を上げるには、
社員を訓練によって能力を高めること、
モチベーションを高めることの2つの方法が示され、
マネジメントの本質がクリアに示されていた。

コアな部分は随分昔に書かれたようだが、時代のずれを感じさせず、ほとんど違和感がなかった。
少し文章に違和感がある箇所が多かったが、内容が面白かったので最後まで読めた。

ミドルマネージャー向けの本とはいえ、新入社員も入社数年後の社員もそれぞれの立場の中で、
実践に活かせる知恵が凝縮されていると感じた。
この本に書いてあることは、全て知っておいて損はない。
若手社員のうちから。。。はやめに。
本来の読者の対象であるマネージャーに限らず、チームで仕事をするすべての人々にとって
学べることが多いと、門外漢ながらそのような感想をもった。



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「禅と生きる〜生活につながる思想と知恵 20のレッスン」 [読書]

「禅と生きる〜生活につながる思想と知恵 20のレッスン」宇野全智 著 山川出版社

日本人はもちろん外国人の旅行者まで一般の人を対象とした座禅、写経、宿坊体験が行われている。

有名な経営者では、アップル創業者スティーブ・ジョブズ氏、京セラ創業者で、JALの再建に力を尽くした稲盛和夫氏、パナソニック創業者の松下幸之助氏など。
禅の思想が、個人の人生のみならず、その企業の経営方針に大きく影響を及ぼしてきた。
最近ではグーグル、インテルをはじめとして、世界規模の企業が、研修プログラムに禅を取り入れることも珍しくなく、ビジネス誌にも禅の特集が組まれる。
日本に限らず、世界の中に座禅や禅的な考え方に関心を持ち、それを実践する人が増えている昨今。
禅 (ZEN)も世界共通語になりつつある。


日本でも、行政が主催するイベントや研修会で禅の思想が取り上げられることはもはや珍しいことではない。一般的に「禅」は、宗教的な要素は薄れており、ひとつの宗派のものではなく、広く日本の文化や伝統芸能、茶道や華道、剣道、柔道などの根底にある価値観だと捉えられている。
地域の子ども達や婚活イベントにも座禅体験や写経体験が取り入れられることもしばしばある。



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そういうわけで、今回は曹洞宗の禅僧の著書を紹介する。
山形県 地福寺副住職、宇野全智氏
理学部生物学科卒業。
曹洞宗の教えを一般の人に分かりやすく伝えるために活動する1973年生まれの著者。
曹洞宗の布教師養成機関修了後、大本山永平寺で修行。
研修会講師などを務めるなど布教活動以外にも、自死遺族の支援や被災地支援にも積極的に関わる。


禅をしらないビギナーの方にとって、非常にとっつきやすい内容となっている。
入門編のさらに入門編といった感じで、さらっと書かれている。
"禅"に関心のある方に、どんなものかちょっと触れてみようという方に、お薦めする。
著者自身の永平寺での実際の修行の様子や日課も詳しく説明されている。

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以下、現代の教育界の現状を踏まえ、とりわけ教育に役立つと思われる箇所を紹介する。

p32 仕事と修行は表裏一体

道元禅師『典座教訓』より
喜心、老心、大心の3つの心構え

『喜心とは、自分の為した務めが誰かの役に立ち、自分の存在が誰かの生活を支えていること、
そうした巡り合わせで仕事ができる喜びを感じること』
『老心とは、老婆心ともいい、老婆が孫を思うように、親が子を思うように心を尽くし、
相手を思い、仕事にあたること』
『大心とは、大きな山のようにどっしりとした、偏ったり固執したりしない心をもつこと。
浮かれも落ち込みもせず、物事を俯瞰し、成功も失敗も一つの景色の中に一緒に捉える心をもつこと』


p141

『雑宝蔵経』(1500年以上も前に作られたお経)
「無財の七施」

眼施 眼差しを施す。
和顔施 (わがんせ) 笑顔を施す。
語施(ごんせ) 言葉を施す。
身施(しんせ) 行いを施す。
心施 (しんせ) 心を施す。
床座施(しょうざせ)座席を施す。
房舎施(ぼうじゃせ)泊まる場所を施す。

p156
道元禅師 『正法眼蔵』 「弁道話」より
「放てば手に満てり」
「無所得・無所悟」の座禅
手放すことによって手に満ちるものがある。
求める心を離れた時にこそ、結果的に手に満ちるものがある。

p218
釈尊(ブッダ)の最期
弟子達に残した遺言

「私を灯火とするのではなく、みずからを灯火としなさい」
教祖としての私ではなく、自分自身を頼りにしてしっかりと歩んで行きなさい。

「すべては壊法である、怠ることなく精進しなさい」
壊法とは「今は正しいことでも、いつかはそれが変わるかもしれない」という意味です。

p219
禅の世界には「殺仏殺祖」という言葉があります。
仏に会っては仏を殺し、仏祖にあっては仏祖を殺す

仏教の根本には、「無常」という教えがあります。

p220
釈尊の遺言は、最後の段階で、自分の教えですら確かなものであり続けるのかはわからないと、
「自己否定」の要素を残すものとなりました。
しかし、この姿勢こそ仏教の目指す「揺れ幅の価値」を担保しているのだと言えます。

揺れてもいい。迷ってもいい。
それらすべてが自分自身にしなやかな強さを与えてくれるのだと受け止めることができた時、
人間の「強さ」の意味や基準が、今までとは違って見えてくるはずです。


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●「喜心、老心、大心の3つの心構え」
●「無財の七施」
●「すべては壊法である、怠ることなく精進しなさい」
●「諸行無常」
●「私を灯火とするのではなく、みずからを灯火としなさい」
●「殺仏殺祖」
●「揺れ幅の価値」と「強さの意味」を再確認

これらの思想を、教育改革の主たるテーマに当てはめてもう一度見直すと、
より視界がクリアになることが容易に理解できるだろう。
歴史ある禅の知恵は、いたるところで活躍してくれる可能性をもっている。
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「元素生活 完全版 寄藤文平 著 化学同人 2017」 [読書]

物事の本質に迫りたいという知の欲求はだれにでもあると思う。
心ってなんだろう、
世界ってなんだろう。
いきものってなんだろう、
物質ってなんだろう。

外せないのは、物質は何からできているか。

自身が科学を学ぶ上で、最も衝撃を受けたとき。
何度かあるが、"原子"ももれなくその中に入っている。

生物も無生物も、原子からできている。
どちらも、原子でできている。
そう、どちらも。

「同じ原子からできているのに、生きているものと死んでいるものの違いはどこにある?」
小学生のお子様に、このように聞かれたら、大人は何て答えるだろうか?

ここで、即答できるあなたはきっとすごい。
哲学者か政治家か科学者か、それとも・・・・??


今では、もっともっと小さな素粒子の話しまで、切り込めるのだが、
ややこしいので、ひとまず、原子のところまで。
原子については、小学生からぜひ知っておいてほしいのだ。
(物質の粒子の概念、小学生の時期に教えている国も多い。)

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「元素生活 完全版 寄藤文平 著 化学同人 2017」


確かに化学同人から出ているのだが、「元素をこのように捉えるか!?」
と思わずうならせる新鮮な切り口だ。

なるほど、イラストレーターさんの作品。

おかたいカチカチ頭の人 (ごめんなさい??) にはなかなか真似できない、
やわらかな視点から実は元素は身近な存在であり、
日常生活と密接な関係を築いていることを教えてくれる技が光る秀逸な本だと思う。

生活の中の元素の時代ごとの移り変わりや、ごはんの元素たちまでユーモアあふれるイラストとともに
シンプルにみえる化して紹介されている。

周期表の元素、放射能、核融合、核分裂、水兵リーベ・・・などといった、
オカタいイメージしかお持ちでない方にぜひパラパラとページをめくっていただきたいと願う。

明日から、元素が身近な存在になることまちがいなし。
やわらかな元素の世界を届けてくれるあたたかいフレンドリーな一冊。








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「日英ことわざ文化事典 山田雅重 著 丸善出版 2017」 [読書]

「日英ことわざ文化事典 山田雅重 著 丸善出版 2017」

以前、ドイツのレストランで偶然、隣のテーブルの人もお一人様で、私もお一人様であったため、
自然と一緒のテーブルで食事をすることになった。

そのときの会話の中で、"一期一会"という言葉を説明したかったのだが、
サクッとスムーズに説明できなかった経験がある。
何とか、分かってもらえたのだが、できるかぎり正確に伝えたかったため、
なんだか悔しい気持ちが残ったのだ。

当時は、スマホやPCを手元に持っていなかったのでその場で調べることもできなかった。
ほんとうに、一期一会であった、ちょっぴりニガい経験だ。


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というわけで、自分のお気に入りの四字熟語やことわざを日本語だけでなく、
英語でも知っておけば、自分のものとしておけばお得かもしれない。

「日英ことわざ文化事典 山田雅重 著 丸善出版 2017」
本書には、一期一会は載っていないが、
英語ではこう言うんだっというプチ発見がいくつかあった。

少なくとも、お気に入りのいくつかを知っておけば、ますますグローバル社会。
活躍してくれるときがきっとやってくるに違いない。

人間だれしも、ひとつやふたつ、モットーにしていたり、お気に入りにしている名言やことわざが
あるのではないだろうか。





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「オノマトペの謎〜ピカチュウからモフモフまで窪薗晴夫編、岩波書店、2017」 [読書]

最近は、一昔前に比べ、非侵襲的な脳波測定やMRIのような手法がが簡便になってきたことから、
赤ちゃんを対象とした脳の情報処理の解析も進んでいる。

発達心理学者が、従来のノウハウとこの電気生理学的手法、脳科学的手法を組み合わせることで、
赤ちゃんの脳の反応をモニターすることができる。
比較的有名なのは、言語の発達の研究分野における言語習得でのLとRの聞き分けだ。
幼児の言語の獲得について、少し、勉強することにした。



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今回は、今年5月に出版されたオノマトペの本を読んでみた。

オノマトペ (擬声語)
実際の音をまねて言葉とした語。さらさら、ざあざあ、わんわんなど。
広義には擬態語も含む。(広辞苑より)

日本語のオノマトペだけでなく、外国語のオノマトペも扱っており、オノマトペについて一通り探究していて興味深かった。


p105、オノマトペは言語の学習に役に立つのか

赤ちゃんの言葉の発達とオノマトペには深い関係がある。
大人も、動作について語る中で、対象が小さければ小さいほど無意識にオノマトペを多用する傾向がある。子どもに対してオノマトペを使うのには何か理由があるはずだ。

一歳を過ぎた赤ちゃんでは、モノを見せたとき、モノが単語と合っている時と、合っていないときで、違う脳波のパターンが見られる。この脳波を認識の指標として実験を行うのである。


興味深かったのは、p109。
●「もま」と「きぴ」の意味を赤ちゃんはわかる?
生後11ヶ月の赤ちゃん、トゲトゲ、カクカクした形の吹き出しのような形と、丸みをおびた吹き出しのような形を見せる。たいていの人は、丸い方が「もま」で尖っている方が「きぴ」であると直観的に感じる。

赤ちゃんに言葉と対象の組合せをつぎつぎと提示したところ、、、、
まだほとんど言葉を知らない11ヶ月の自転で、赤ちゃんは人が発する音声が何かを指し示すものだと思っていて、単語の音声が音に合わないモノと対応づけられると違和感を覚えたのである。

生後11ヶ月の赤ちゃんは初めて聞いた単語でも、それに合った形を識別し、合っている形をその単語の対象と自然に思ってしまうように至るメカニズムがこの時期の脳に既に潜んでいることがわかる。


●子ども達がオノマトペが好きな理由は?
・感覚的でわかりやすい
・場面全体をオノマトペ1つで表すことができること
・声色や発話の速さ、リズムなどで人の感情を乗せやすいこと
・劇場的な効果を作れること
など

●オノマトペに親しむことで子どもは言語の性質を学ぶことができる
・音と視覚情報の対応付けを感覚的に「感じる」ことにより、言葉は意味を持つという気づきにつながる
・リズムや音から、母語の音の特徴や音の並び方などに気づく
・母語特有の音の結びつきを感覚的に覚える
・沢山の要素がありすぎる場面で、単語が指し示す部分に子どもが注目するのを助ける


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この本は、2017年1月21日に東京で開催された、第10回NINJALフォーラム「オノマトペの魅力と不思議」国立国語研究所主催、言語系学会連合共共催と連動する形で企画されたものだそう。

執筆者7人の先生方の中には、知っている先生 (今井むつみ先生、秋田喜代美先生、小野正弘先生) もいらっしゃって、今後も、言語と学びについてもう少し深く探究したいと思った。
どのような分野に進む人間でも、だれでもいつでもどこでも必要とされるのが、言語能力。
様々な人と協働するためにも、自分自身の学びのためにも強力にものをいうのが言語表現能力である。

全ての子ども達に、言語力、表現力を強化してほしいと願っている。

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「未来の学校〜テスト教育は限界か」 トニー・ワグナー著、陳玉玲 訳 玉川大学出版部 2017 [読書]

「未来の学校〜テスト教育は限界か」 トニー・ワグナー著、陳玉玲 訳 玉川大学出版部 2017

訳者の陳玉玲氏が、2013年に偶然ニューヨークの書店で本書を見つけ、翻訳されたものである。
2008年に刊行され、2014年に「5年後ー最悪の時代と最良の時代」が付け加えられ再び出版された。
2017年5月25日に初版として日本語版の本書が発表されている。

したがって、内容は2008年の時代のものであるが、問題の本質は変わらず、日米の学校教育事情は
非常に共通点が多いため、日本の学校教育を考え直すための重要なヒントを多く与えるものである。

本書は、公教育、民間教育に関わらず全ての教育関係者は言うまでもなく、
お子様をお持ちの保護者さん、
良い仕事をする若手社員を求めるビジネス界のリーダー達、
そして、志高い、生涯学び続ける全ての人々に読んで頂きたいおすすめの一冊である。


今の時代、"探究型の学習"が、なぜこれほどまでに求められるのか、について明確に回答されているので、"探Q舎の授業"にご興味ある方にも、ぜひ読んで頂きたいと願う。



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21世紀の世界を担う子どもたちに求められる能力とは何か?そのため公教育は何を与えるべきか。
著者は、教育の本質的な問いに真っ向から向き合い、解答を探究している。

●これからの時代に求められる力
各方面で偉大な業績を上げるビジネスリーダーたち、大学教授たちへのインタビューを行ったところ、彼らが口を揃えて若者達に求める資質は、専門的知識や技術ではなかった。
今日最も重要なスキルについて尋ねると必ず"好奇心"、"探究心"が上げられる。
「的を射た質問をする能力 (論理的思考力)」
「他人と対等に議論する能力」、
「多相互依存し協調することで仕事を達成する能力」。
 
これからの時代、知識労働社会において、ホワイトカラー、ブルーカラーに関わらず、
論理的思考力や課題解決能力が、いかなる労働者にも求められる能力なのである。
必要でない人間は一人もいない。
また、ダニエル・ピンクの「ハイ・コンセプト-新しいことを考え出す人の時代,2006年」では、想像力、創造力、共感の能力が支配的になるという。
創造性に関しては、世界中の調査において、最も求められる力として常に挙がっている。

一人で遂行できる仕事はなく、全ての仕事はチームで成し遂げられるものである。もはや、中間管理職の重要性は消えつつあり、全ての労働者が、自分の頭で考え、問題発見、課題解決を行う能力が求められている。誰も方法や答えを教えてはくれない。


P129、 21世紀にあって最も重要と思われる厳しさとは、労働、市民生活、生涯学習に必要な核となる能力を身につけていることである。学問を学ぶことは、能力を向上させる手段であって、それ自体が目標ではない。どれくらいしっているかではなく、知っていることで何ができるかが重要である。


●P77、これからの時代を生き残るための7つのスキル
(これまでの時代の3Rs(読み書き計算)にとって代わる)
1) 論理的思考力と問題解決能力
2) ネットワークによる協力と影響力によるリーダーシップ
3) 機敏性と適応能力
4) イニシアティブと起業家精神
5) 口頭及び文書による効果的なコミュニケーション能力
6) 情報にアクセスし分析する能力
7) 好奇心と想像力


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●時代遅れの学校教育
ところが、社会の急激な変化に学校教育の世界は全くついて行けていないのである。
アメリカもどこかの国と全く同じ状況であるらしい。。。。。。
現在学校で教えられている内容と、グローバルな知識経済を生き抜ける能力との間に、
大きなギャップがあり、知識詰め込み型教育及び暗記力をひたすら試すというテストから脱却できていないという。

これからの子ども達にとって必要な教育はどのようなものか。
優れた授業とはどのようなものか。
定義は?
P63、優れた授業とは、全ての生徒が全ての授業において前向きに取り組んでいること。


●学習に対する動機付けと良い授業を模索する〜現在の子ども達の生態を踏まえて
デジタル世代。
1つのことに集中するすることは滅多にない。
他者との関係を切望する。
即時の満足 (我慢しなくなり、要求も多くなり、待つ事ができない。
長時間の読書や長文の指示を拒否する。空間認識力は強い。視覚から学ぶのが得意。尊厳を渇望している。腹を割って話せる大人の相談相手が欲しい。親からのストレスは要らない(ヘリコプターペアレント)


●人が働き、勉強をする理由は?
マッキンゼー&カンパニー
マイケルユング
人間が働く、あるいは勉強をする理由は3つのみ。
1) 必要性、脅迫、圧力 (生理的欲求)
2) 習慣の転移 (社会の規範と伝統的な慣例によって形成される習慣、社会の規範を守ろうとする思い
3) 興味、欲求、熱意(情熱)などの”引きつける力”、自身の内からの原動力

●探究学習の重要性
現代の子ども達には、困難な課題に取り組む機会がないという。
そして、相談相手となる大人の存在の有無が、生産性ある困難な課題の達成の成否を決定する。

→探究の核心は、困難に直面することにあり、
問題を提起することは、問題を解決することよりも重要である。
(アインシュタインの知識よりも想像力が重要である。という名言に等しい)

先進的な学校で行われる探究型の授業を見学した専門家は・・・?
弁護士曰く、「法的な分析みたいです」
エンジニア曰く、「クリティカル・パスの実践そのものです」
科学者曰く、「科学的方法です」
いう。


●先進的な学校は、着実に高い学習効果を生んでいる〜暗記もテストもせずに
Q) 優秀な教員をどのように評価しますか?
A) 生徒が成し遂げた学習の質から判断する。授業や評価も外部に公開。専門家にも評価を依頼。 by 先進的な学校の校長
学習評価のあとのフィードバックも徹底されている。
お手本や、不十分な学習例を生徒に公開し、学習を促進させる。

教師は常にチームで動く。

3つの先進的な学校の共通点
1) 学習と評価中心
・継続して学び続ける能力
・研究能力
・文章力、
・コミュニケーション能力(口頭、文章)
2) やる気、学習の動機づけ
・学内外の大人との近しい関係
・疑問や興味を掘り下げる機会が、学習への強い動機づけへ
・一人一人に合わせた実践的な学習〜プロジェクト、議論、実習、論文などに一人一人の生徒の声を反映
3) 学校の責任と教員の向上
・現実社会で生徒達が成し遂げることを究極の成果とみなし、その後の経過観察を行い、学校がその情報を教育プログラムの改善に役立てる。
・学校の洗練した体制と、仕事のやりがいが教員の継続的な向上へ直結するしくみ
4) 透明性の高い体制
・小規模の学校かつ、少人数制→一人一人に適した学び
・ペアやチームとしての教員—生徒の担当制 (数年間の強固な関わり)→強い愛情と責任感
・授業公開、評価公開。→保護者、専門家、地域の人々の理解、協力、支援
・評価もテストではなく、公開制の多角的なパフォーマンス評価 (第三者評価あり)。
プレゼン、ポートフォリオ、自由研究、論文、長期のインターン、実習。

疑問や興味を掘り下げる”探究型の学びの機会”を提供することが、学習への動機づけとなる。

探究型の学習により、一人一人の興味関心を深め、深い学びを!!
探究で、ぜひ産みの苦しみを体験し、乗り越えよう。
創造とはそういうことである。

その先に、創造が生まれる。
イノベーションが生まれる。
自身へ、会社へ、地域へ、社会への貢献につながる。
7つのスキルが身につき、一人一人の能力が最大限に発揮され、社会に貢献することができる。



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