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座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 2017/1/13 [読書]

座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 2017/1/13
出口 治明 (著)



出口氏の著作を読んでみたいと思いまず一冊読んでみた。
著者の視点で読み解かれ、非常に分かりやすく噛み砕かれていた。
原著を読んでみたいと思った。

『貞観政要』は帝王学の書と捉えられがちではあるが、決してそれは
人の上に立つ人という限られた人たちだけのものではないように思う。
リーダーだけに役立つものではなく、どのような立場の人もこのような視点はとても重要。

例えば、「三鏡」を持つ。
銅の鏡、今の自分の表情(状況)。
歴史の鏡、将来を予想する教材は歴史にしかない。
人の鏡、厳しい直言や諫言を受け入れる。

例えば、「上の者と下の者が互いに疑い合うと、国は治まらない。」
実績を出したら信頼する、ではなく、信頼するから実績が出る。
上下など無関係に、人対人の関係はそうじゃないだろうか。
先に信頼がきて、あとから出力がくる。
個対個でも、組織対組織でも。
そして、教育でも。
先に無条件に信頼することだと思う。

貞観13年、魏徴は、初心を忘れ、道を外すようになっていた太宗を諫めた。
太宗の失策、失政を全十か条にわたり真っ向から指摘し、
太宗が有終の美を飾れなくなる理由が綿々と明記されていた。

命懸けの上表文。
「・・・・もし、私の意見を参考にしてくださるのなら、陛下の怒りに触れて処刑されることになっても満足でございます。・・・」

太宗はこの諫言に応え、
「あなたの言葉を屏風に仕立てて、朝夕に仰ぎ見ることにした。
1000年あとの君が、君主とその臣下の間にある義を知ってほしいものである」

魏徴は、癇癪を起こした太宗を二百回余りも諌めたという。
魏徴は、元は、兄、李建成に仕えていたが、李世民が才能を見出し側近として採用した外様である。

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以下、メモ。
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太宗って誰?

次男であった李世民は、626年、兄の李建成を殺害し、父の高祖を幽閉(玄武門の変)し、
第2代の皇帝太宗(在位626~649年)となる。
中国史上でも有数の名君と称され、その統治は「貞観の治」と言われ有名。
皇帝についたスタートが拍車をかけたのか、名君として1000年後に評価されることを深く決意し、
これを自身の中で確固たる目標にしていた。


貞観政要って?
中国の貞観の時代、627〜649年に唐の皇帝・太宗を臣下たちの政治の要諦をまとめた書物。
太宗とそれを補佐した臣下たち(魏徴・房玄齢・杜如晦・王珪ら重臣45名)との政治問答を通して、貞観の治という非常に平和でよく治まった時代をもたらした治世の要諦が語られている。

太宗は、臣下の直言を喜んで受け入れ、常に最善の君主であらねばならないと努力した。
唐代の諫官には毎月200枚の用紙が支給され、それを用いて諫言した。
歴代の王朝に諫官が置かれたが、太宗のようにその忠告を聞き入れた皇帝は極めて稀であった。
人は、耳の痛い言葉を受け入れるということがいかに難しいことか。
太宗は、魏徴の諫言を屏風にして日々目に入るようにしたという。


本書は、中国では後の歴代王朝の君主(唐の憲宗・文宗・宣宗、宋の仁宗、遼の興宗、金の世宗、元のクビライ、明の万暦帝、清の乾隆帝など)に愛読された。
日本では、北条氏・足利氏・徳川氏、明治天皇らに愛読されてきた。
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『パパは脳研究者』 池谷裕二   クレヨンハウス  2017 [読書]

今回は、幼児の発達を最新の脳科学の視点から時系列的に復習したいと思いまして。
今回は、池谷先生の著書をご紹介します。
これまで、何度か学会で池谷先生のご発表を聴くことがありました。
ご研究内容も大変重要なテーマで奥が深いところですし、
さらに、魅力的なプレゼンテーションをさせる先生です。

現在は、お二人の娘さんをお持ちで、こんなにイクメンだったんだ!!って、ちょっと驚きました。
なんだか微笑ましいです。
これまで存じ上げなかった、池谷パパとしての微笑ましいお姿が浮かびます。

池谷先生も仰っているように、お子様の発達は、ほんとにお一人お一人異なるかと思いますが、
一ヶ月ごとの記録簿から沢山教わることがあります。


子育て中の親御さまにとって、少しでもお役に立てればと願い、
勝手気ままにまとめましたので、よろしければご覧下さい。


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『パパは脳研究者』 池谷裕二   クレヨンハウス  2017


【妊娠】
■初妊娠した女性の脳の変化
バルセロナ自治大学のヘクゼマ博士。
妊娠すると、大脳皮質の灰白質の体積が大規模に減少。
シナプスが刈り込まれて効率よく神経回路が働くように。
体積減少が顕著なのは、他人の心を読む皮質領域である。
この減少量が多い母親ほど、産後の赤ちゃんへの愛情が強かった。
この脳回路の変化は、産後2年経った時点でも変わらなかった。

【1ヶ月】
■オキシトシン:相手を絶対的に信じ、愛情を注ぐためのホルモン。仲間とそれ以外の敵に区別するホルモンとも言える。鼻にスプレーすると他人を信じてしまうほど強力な効果がある。授乳中にもよく分泌され、さらに我が子への愛情を強める働きをする。

男性のオキシトシン濃度は?
父親は子育てに参加すればするほど、オキシトシン濃度は増加する。
最終的には、母親と同レベルまで到達する。

■視線と顔への嗜好
生後2-5日の乳児でも視線が合っているかどうかを識別できる。
生後4ヶ月までには、親と視線が合うことをはっきり好むように。
顔への嗜好は、早くも妊娠25週からみられるそう。

【2ヶ月】
■モロー反射: 脳回路が未成熟で大脳皮質の神経細胞が同期活動することによる。けいれんに似た単純な反射現象と言われる。

【3ヶ月】
■クロスモーダル連合:五感がばらばらに働くのではなく、連動して全体として協調すること。
■見えるものに自分から手を伸ばす時期。世界が3次元だと気づき始める時期 (空間概念の獲得)。
■マザーリーズ:音程が高い声に乳児はよく反応することが知られる。
■父と母は別人だとわかる。

【4ヶ月】
■何でも口に入れて確かめようとする。
■実物の顔と写真の顔が別だと理解する。
(写真や鏡に映った自分を、自分と認識できるのは、1歳半頃。)

【5ヶ月】
■笑い方にバラエティーが出てくる。

【6ヶ月】
■母親が姿を消すと泣くようになる (時間の概念の獲得)。
■よくマネをするようになる。声マネも。(3ヶ月まではマネをしないことが分かっている)ちなみに、言葉の成長にはほぼ男女差がないことがわかっている。

【7ヶ月】
■音楽の3要素の中で、最初に習得するのがリズムで、生後半年頃までに。
■脳の両半球の機能分離はまだ不十分なので、ほぼ左右対称の身体の動き。

【8ヶ月】
■言葉の吸収力が強くなってくる。
■言葉遣いに大人は注意。

【9ヶ月】
■親指、人差し指で精密把握 (親指と人差し指でつまむ)。
(320万年前、アウストラロピテクスが初めて人間のような精密把握を行った。)
■共同注視。問題意識の共有は、恊働作業を行うための基礎になる。

【10ヶ月】
■痛みが身体のどこから来たのかわかるようになる。

【11ヶ月】
■歩きたい欲求は生得的。スプーンを使いたい、道具へのよっきゅう。自分で使いたい。自分でやりたい欲求。

【1歳】
■指差し、
■能動的な行動こそが、脳が強く活性化する〜主体的に行動することの重要性。
(ネズミのヒゲを物に触れさせる実験、能動的アクティブタッチは、受動的パッシブタッチよりも、実に10倍もの脳の反応の差がある。)

【1歳1ヶ月】
■睡眠することで、覚えた単語を汎化していく。
良く遊びよく寝ることで、語彙力を増やしていく。

【1歳2ヶ月】
■ベイズ推定、1歳の脳でもベイズ推定ができる。
AIとは桁違いに少ない訓練で上達できるのが人の脳。
思い込み、信念に基づき行動する生き物、それがヒト。

【1歳3ヶ月】
■予測。先手を打つ事、予測して対処することができるようになってくる。
ヒトの脳の最重要の機能の一つ、先手を打つこと、予測して対処する。
★気が合うってどういうこと?
会話している2人の脳反応を調べる。気が合うとは、2人の脳の状態が同期して、脳活動の波長がぴったり合っていること。話しを聞いている相手の脳は、話し手の話しを聞くよりも、わずかに前に活動を始める。会話が噛み合えば噛み合うほど、聞き手の脳の一部は、話し手の脳よりも前に活動を始める。
その脳部位は、予測に関連した部位である。事前に予測しながら、話しを聞いている。これが気が合っている状態。

【1歳4ヶ月】
■親の口癖が子どもに受け継がれる。
★地球上で脳を持っている生物は全体の0.13%に過ぎない。

【1歳5ヶ月】
■鏡の自分を認識。
1歳半になりようやく鏡像が自分の姿を映していることを認識できる。
(一般に、4ヶ月頃から鏡に映る自分の姿に関心を持つ。
1歳を過ぎると、鏡像と実在は異なることを徐々に理解。)

★鏡に映る自分を認識できるのは、ごく一部の動物だけだそう。
カラス、チンパンジー、イルカ、アジアゾウである。
カラスが賢いってよく言われるけれど、たしかにそうなんだ・・・
一方、アフリカゾウや、犬は無理らしい。

【1歳6ヶ月】
■2語文で言葉の表現が広がる。(誰からも習わずとも、必ず名詞のあとに形容詞や動詞をつける。)
■積み木が上手になってくるが、途中に小さな積み木を積んでしまうので崩れやすい。

【1歳7ヶ月】
■瞬間の記憶が長持ちしてくる。
作業記憶が発達してきて、パズルの途中で声をかけてジュースを飲ませても、その後、すぐにパズルへ戻る。(作業記憶、展望記憶が発達を意味)

【1歳8ヶ月】
■第一反抗期(イヤイヤ期)イヤイヤが起こるのは、子どもの要求と社会の制約もしくは親の事情がぶつかるから。イヤイヤ期の対処法の一つとして、鏡に本人のイヤイヤ姿を映して見せるとおさまることも。
■命名期。
色の識別、睡眠中に色の記憶も定着を。(虹の色の数は、米国6色、中国5色)
1歳半、しきりに物の名称を尋ねる。命名期に300語程の語彙にふえる。

【1歳9ヶ月】
■2単語期を卒業
■相手の立場に立って、ものをみられるように。
■メンタルローテーション(頭の中で自由に物体を回転させて眺める能力、認知の基礎能力)。立体パズルがとても良い。
■エゴセントリック(自分中心の視点)からアロセントリック(外部からの自分の立ち位置を見る視点)へ。

【1歳10ヶ月】
■物をかくす
■ウソをつくように (例、靴下を後ろに隠しないという。)

【1歳11ヶ月】
■強化学習。小指を立てるのはまだ難しいが、自ら頑張る。できると嬉しそう、

【2歳】
■見た目ではわからないような、温・冷や、軽い・重いまで表現できるように。
■文字に興味。覚え始める。
■数字はものの数を表し、どんどんふえるといっぱいになるとわかる。
■赤ちゃん言葉を脱する。

【2歳1ヶ月】
■網をお盆に見立てておままごと、空想おままごと。
■色の恒常性、赤い消防車(暗い所でも赤は赤だ)、絶対性の習得

【2歳2ヶ月】
■ものが一緒、違う、を区別する。似たようなアルファベットも識別可能に。
 左手、右手の区別もできる、左に曲がって、というと通じる。
■指先が器用に。

【2歳3ヶ月】
■4単語以上の長い文章を話す。
(しかし、この時期の記憶には、しばしば偽の記憶が含まれるのが一般的なので要注意)
■自分のことを見てみてと言い出す。視線を要求するように。

【2歳4ヶ月】
■これからどうなるかを予測して対処するようになる
過去の記憶に基づき予測する。日頃の記憶が脳回路によりしっかりと蓄えられるようになってくる。
2歳前半の時期、知っている単語を羅列する羅列期。
■イヤイヤ期もうすぐ卒業。


【2歳5ヶ月】
■動詞の活用形を使えるように。
■数字を数えられるように。
1の次は2、2の次は3と、視点を一つ前に進める、これもパースペクティブのループ的な応用。相手の裏をかく、おべっかを使うのも同様。

【2歳6ヶ月】
■映像認識、ある時期までの特殊能力のため、パズルの天才であることも。
■自我がしっかりしてくる。自尊心も。

【2歳7ヶ月】
■おむつがとれた。
■自己抑制力。自制心。社会性の本質は、自己抑止力。
おもちゃを友だちに貸す。塗り絵をはみ出さずに塗る。我慢できる。
好きなDVDを1回見たら、かしこくお風呂に入るように。

自己抑止力が至る所に出て来て、社会 (園)に出る準備を。


【2歳8ヶ月】
■複次視点の獲得、例)ぬいぐるみで1人2役。
■想像力。柔軟性、発想力。自由なもののみたて、まんじゅうやミニカーを電話に。視点の自由度の向上。新しい遊びの開発など。


【2歳9ヶ月】
■3歳近くになると、1000語ほどの語彙力。
■模倣期、周囲の言葉を良く真似する。
相手の反応を予期する力が増す。相手の期待や社会のしきたりを知った上で、あえてその期待をはずしたり、裏をかくことが楽しい時期でもある。

■何に興味を示すかは一人一人違う。
半年程前にアルファベットに強い興味をもち、気づいたら全部覚えていた。
一方、ひらがなの無料教材を見せても興味示さず覚えなかった。
数字は好き。2+3ができる。
★ひらがなや、数字、アルファベットに興味を持つ時期や順番は個人個人異なるようだ。
専門的には、”準備された心”、という。
“吸収できる土がないと水をやっても育たない”

【2歳10ヶ月】
■他者を意識した行動
困っている人に気づいて助けたり、労をねぎらったり。
予測と対処、高度なウソをつく、思いやり。

【2歳11ヶ月】
■絵本を読める。
■ひらがなの習得。
1ヶ月くらい前から急に、毎日のように『あいうえお、見たい』と言って、教材のビデオを見たがって。あっという間におぼえた。
2ヶ月前に同じビデオを見せたときは全く反応を見せなかった。

【3歳】
■ヒトの大脳皮質の神経細胞数の変化について
誕生時が最高で、3歳までに30%まで減る。その後は、健康ならずっと変化せず、その30%を維持する。
ヒトの大脳皮質の神経細胞の元々の数を100%とすると、3歳までの間に70%が減少、つまりどの神経細胞を残すかが決まるのが3歳までである。

■自分の意思を理由とともに説明したりできる。自分で考える事が少しずつできるように。

脳科学者のパパは、
子育ては何が正しいかは実に難しい問題だが、と断った上で、
思考力や、論理力の発達をサポートする方向で子育てに奮闘されている。


ほんとうは、4歳まであるのですが、今回は3歳までで一区切りしますね。
えらい、長くなりましたね。
ご覧いただいた方、どうもありがとうございます。



★おまけ★
小学校にあがるまでに、親子がよく接するなど丁寧に世話され、大切に育てられた幼児は、そうでない子に比べ、海馬の回路が2倍以上よく発達し、思春期になった後も自分の感情を上手くコントロールできるようになる。


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『Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた気象学者』 [読書]

『Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた気象学者』 –2017/8/3 小学館
佐々木 健一 著

アメリカで大活躍した偉大な気象学者の知られざる感動ストーリーです。
海外で偉大な業績を残し著名だけれど、日本では殆ど知られていない、
そんな人々は意外に多いですが、その最たる事例かもしれません。

私もこれまで存じませんでしたが、偶然、何かのご縁で出会った本です。

時代の先を行く人には、例外なく周囲から猛批判が飛びます。
強く激しい向かい風が襲います。
しかし、屈せずに闘い続け、信念を貫き通します。
そしてとうとう、偉業達成、多くの人の命を救うことに貢献しました。


父からの実地での体験型教育、
18歳の科学賞受賞が研究者としての人生の原点となっていること、
専攻が、はじめから気象学ではなく、機械工学であり、物理学も学んだこと、
長崎の原爆調査の経験、
地質学の教授に同行した調査の体験など

ほんとうに人生にはひとつも寄り道や無駄なんてないんだと教えてくれます。
というよりも、氏は、これまでの経験の一つも絶対に無駄にしないという決意で、
常にベストを尽くして日々闘っていたからこそ、
全ての経験とそこから得られた智慧が、本当の意味で活きたものに転化したんだと思います。


最後は、お気の毒なことが重なり、読んでいて辛かったです。
親友が病状を記録するように伝えたところと、それに応える博士の姿勢が感動的でした。


中高生、青少年の皆さんにもぜひ読んで欲しい偉人伝です。
誰もが知る、メジャーな偉人伝とはまた趣が異なります。

得られるものがあるのではないでしょうか。


氏は、18歳のときに父を、そしてそれから数年後に母と妹も結核で亡くしています。
32歳の時にアメリカに渡り、その後、"Mr.トルネード"とよばれるまでに。

回顧録の冒頭は、
「私の人生は、"幸運"と書かれた石の上を歩いているようなものだった」
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『君たちはどう生きるか』 吉野源三郎 POPULAR [読書]

中学生、高校生、大学生、
学生のうちに読めたら、きっとラッキーでしょう。



『君たちはどう生きるか』 吉野源三郎 POPULAR
何十年も前に書かれた歴史的名著ですが、全く色あせていません。
スラッとしたタッチでほんとうに大事なことがたくさん書かれています。
物語として人生の本質に迫るベストセラーです。

中途半端に、道徳、道徳と騒ぐくらいなら、こういう素晴らしい本をじっくり読んで、
自分をみつめる機会を持ってもらう方が、
子どもたちのココロに大切なものがより、しっかりと届くのではないでしょうか。

何でもかんでも口に出して議論すればいいいというわけではなく、

物語だからこそ素直に語れる、素直に受け取れる、
という深い内容もたしかにあるのではないでしょうか。


ゲームの秋もいいと思います。
ラインの秋もいいと思います。
音楽もスポーツもいいと思います。
食欲ももちろん。


でも、読書もいいですよ、きっと・・・・

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p49 〜50
「世の中とはこういうものだ。その中に人間が生きているということには、こういう意味があるのだ。」
などと、ひと口に説明することは、だれにだってできやしない。

英語や、理科や、算数なら、ぼくでも君に教えることができる。しかし、人間が集まってこの世の中を作り、その中でひとりひとりが、それぞれの自分の一生をしょって生きていくということに、どれだけの意味があるのか、どれだけのねうちがあるのか、ということになると、ぼくはもう君に教えることができない。それは、君が、だんだんおとなになっていくにしたがって、いや、おとなになってからも、まだまだ勉強して、自分で見つけていかなくてはならないことなのだ。


p52
つねに自分の体験から出発して正直に考えていけ、

p54
君に考えてもらわなければならない問題は、それから先にあるんだ

p69
ゴムまりやピンポンの玉をもちだして、『これがわたしたちの住んでいる地球よ。それから、これがお月さまよ。そうすると、こうなるのよ。』
・・・
このときのことは、へんにぼくの心に残って、それから大きくなるまでのあいだによく思いだした。

p76
頭の中でどこまでも、どこまでも高くもちあげていったら、あるところにきて、どかんと大きな考えにぶつかったんじゃないか。

p123
あの人々こそ、この世の中ぜんたいを、がっしりと肩にかついでいる人たちなのだ。
・・・君自身は、いったい、なにを作り出しているだろう。
p124
生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。


だから、君は、生産する人と消費する人という、この区別の一点を、今後、けっして見落とさないようにしていきたまえ。

p160
そのすばらしい活動力で、いったい、なにをなしとげたのか。

p162
結局、この大きな流れの中にただよっている一つの水玉にすぎないことに気がつくだろう。
ついで、この流れにしっかりとむすびついていないかぎり、どんな非凡な人のしたことでも、
ひじょうにはかないものだということを知るにちがいない。

p168
英雄とか偉人とかいわれている人々の中で、ほんとうに尊敬ができるのは、人類の進歩に役立った人だけだ。




p171 雪の日のできごと
p192  石段の思い出
ここから先が、特によいです。
ほんとうにいいおはなしです。




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『地球歳時記 ブロンズ新社』 [読書]

『地球歳時記 ブロンズ新社』
ちきゅうのうた、 vol7
がっこうのうた、vol11
ゆめのうた、vol13
の3冊です。


世界一短い詩、ハイクを世界数十カ国の小さな子ども達が詠んでいます。
毎回、それぞれのテーマを設定して募集されるようで、絵と共にハイク作品が載っています。


それぞれのお国柄が出ていて、興味深かったです。
国民性って面白いですね。
ハイクにも、絵にも、何となく"その国らしさ"がにじみ出ており、国名を伏せられていても
どこの国のお子様の作品か、結構当てられそうなぐらいです。

勝手きままな印象ですが、ざっとこんな感じでしょうか・・・
ほんと勝手な印象ですけどね。

ドイツは、年齢のわりにとても落ち着いていてどこか哲学的、絵の雰囲気も同様
アルメニアは、妙にロマンチック、絵も幻想的で可憐な色遣い
中国は、やはり、The 漢詩 ! だし、絵も、The 中国 ! 一目瞭然
ニュージーランドやオーストラリアは、開放的で視界が広く色鮮やか
フランスは、オシャレな表現上手でしょう?というが自覚あり
カナダは、安定した日常の幸福感が語られている、現実を素直に詠む傾向
インドは、普段から宇宙的な世界観で世界をみている
シンガポールは、学校の勉強が厳しいのか、将来を夢みている?
ロシアは、生き物を擬人化するのがお好みのよう

ハイクも、それに付随した絵も、それはそれは高い表現力で、
思わずうなってしまう作品にも出会いました。

絵とセットになっているので、とても味わい深いです。
素晴らしい作品に癒されました。

やはり、子ども達の力って偉大ですね。
観察力、創造力、表現力・・・はんぱないです。




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『考える花』と『感じる花』スティーブン・バックマン著 築地書館 2017 [読書]

上巻の『考える花』と下巻の『感じる花』スティーブン・バックマン著 築地書館 2017

2冊並んで、美しい紫と赤の花の表紙が目に留まり、
その思わせぶりなタイトルにひかれ・・・

とりわけ、タイトルがとってもわたし好みで、これはもう読むしか選択肢がありませんでした。
というわけで早速読んでみました。

著者、スティーブン・バックマンは昆虫学者、送粉生態学者、花と花粉媒介者の研究者。
アリゾナ大学の昆虫学科と、生態学・進化生物学科の教授です。

原書は一巻で、『The Reason for Flowers』となっています。

花の世界を様々な視点からふかーくとことん探究されています。
実は、こんなにもしたたかだった花たち?
彼らの戦略は非常に緻密で精巧なものだった!!

知られざる花の世界が、生態学者によって、これでもかこれでもかと暴かれていきます。
専門の生態学、昆虫学、自然科学的、生物の進化など側面だけでなく、
文化人類学的、歴史学、宗教学な側面からも丁寧に調べられており、
ありとあらゆる角度から、そして時間も過去まで歴史を遡って花を大解剖したものです。
歴史、分化、芸術、医療、食事などと花の関わりをそれぞれおもしろおかしく示されていました。

例えば、こんな感じの内容です。

花びらと花粉粒は弱い、一般にはマイナスの電荷を帯びているんだそうです。
(詳細はとっても面白いのでお楽しみに、ネタバレなしでいきます)

花の登場の歴史が徹底研究されていたり、
食べる花トップ10や食べてはいけない花まで丁寧にリストアップされていたり、
サブリミナルの花の匂いの研究紹介がされていたり、
青い花から黒い花まで徹底リサーチされていたり、、、
まだまだ続きます。

どちらか一巻だけでも読める構成です。
さらに、一人一人、興味のあるセクションだけ選んで読める構成になっていました。
個人的には、やはりご専門の分野の記述が多い上巻の『考える花』の方に軍配です。
最も興味深い内容が多くありました。


ほんとうに多様な側面からの、花の探Qでした。
久しぶりに、読んで良かった!!と思えた、いちおしの良書です。
2016年の著書なので内容も新しく、大満足です。

こんなに視野の広い素晴らしい本を書く教授ってなかなかいないのではないでしょうか?
研究室では普段いったいどんな感じなんでしょうか。
授業もきっととても面白いだろうなあ、なんて想像してしまいました。
どこかに映像が落ちていないか探してみることにしましょう。



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超AI時代の生存戦略 落合陽一 大和書房 [読書]

「超AI時代の生存戦略」 落合陽一 大和書房 2017

落合陽一 氏
日本の研究者、大学教員、博士(学際情報学)、メディアアーティスト、実業家。
筑波大学 学長補佐・図書館情報メディア系助教 デジタルネイチャー研究室を主宰。
名前の由来はプラスとマイナスらしいです。
なんと素敵なお名前なんでしょう。


しかし、驚いたことには、1987年生まれ、まだ29歳、30歳です。
独創的でこれからの時代の研究テーマ、デジタルネイチャー研究にも大いに興味をそそられますが、
一体どんなお方なんだろうっていう人物への強い興味を抱きまして、

今回、著書を読んでみました。

研究者で研究室を主宰し、先鋭のアーティストであり、
スーパークリエイターであり、学長補佐であり、会社経営まで。
いくつもの顔を持ちながら、一体どのような日々をお過ごしなのでしょうか。
日々のスケジュール管理はPCと秘書さんにお任せだそうです。

本の中では、
これからの時代を生き残るために、
ワークライフバランスを終えて、
ワーク”アズ"ライフを始めよう。
と後者の世界観への切り替えを提唱されていました。

他に、重要な視点として、
信仰心 (宗教ではなく、自分は何を信じるかということ、趣味性など。


"遊び"の重要性についてもかなりの頁をさいて書かれていました。
非常に興味深い内容でした。

現在、共に学んでいる6歳から11歳の子どもたちの立場になって、
読んでいました。
そうすると、彼、彼女たちが、最も心身ともに成長するこの大事な、
いま、この時期をどのように過ごすとよいか、
徐々に整理されていきました。

もちろん自分たち自身にとっても、
あるところではマインドセットの切り替えを迫られるわけですが、
彼ら、彼女らは、はじめから近未来型の攻めのマインドセットを容易に選択しうるのです。

一月程前に考えていた内容が、今回の読書でより鮮明な問題提起となり、
思考の整理が随分スムーズになりました。
教育分野にも適用できる大切な内容がありました。

p167-169、子育てに関する内容
「この子は何をすれば喜ぶのか?」
「勝手にやるまでのお膳立て」
全く同感です。
探Q舎の方針とピタリと一致、同じ意見です。

読んでみて良かった一冊です。





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「ことばと思考」今井むつみ [読書]

「ことばと思考」  今井むつみ   岩波新書1278 2010年

先日の「学びとは何か」に引き続き、今井氏の著書です。
こちらも大変面白い内容でした。
ことばに対する深い洞察がきらりと光ります。


異なる言語の話者は、世界を異なる仕方で見ているかという問いは、非常に興味深いテーマでした。

色の名前が、明るい色 と暗い色の2つのみしかない言語。
数字が、1と2しかない言語。

言語は認識にもたらすもの。
言語情報は記憶をゆがめる。

などなど。

人間の世界観への言語がもたらす影響についての奥深い探究を、
最初から最後までずーっと楽しめる内容でした。

子どもたちの発達、言語の獲得についての部分は、
子どもたちと向き合い、彼らの人生の貴重な時期を共有する一人として心引き締めて読みました。

言語の探究は、
決して、ただ、純粋に学問として楽しむだけではなく、
探Q舎における実践として活きたものにしていくための、最重要の探究分野の根幹の一つです。




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『ポケットのはらうた』くどうなおこ 童話屋 [読書]

『ポケットのはらうた』くどうなおこ 詩 ほてはまたかし 画 童話屋

普通の大きさの本たちに囲まれた、
ひときわミニサイズの本が一冊目にとまり、サッと手に取った。
表紙には、やんちゃそうだけど笑ってるかわいい黒光りのカマキリ。
赤と緑のきれいな色合いの間に存在感を示していた。
ときには、癒し系もいいかもしれない。

教材開発のために、何か、良いアイデアがもらえるかもしれない。


内容は、
風、木、鳥、虫など、それぞれが主人公の詩の競演だった。
けやき、かたつむり、かまきり、ふくろう、無生物も生物もひっくるめて、
一字一字にまでとことんこだわって、詩が編まれていることに気づく。

個性的なキャラクターぞろいで、癒された。
そっか、あの粋な表紙で存在感を放っていたカマキリは、かまきりりゅうじだったのか。
おれは、○○だぜ、と連発するかなりやんちゃなキャラだったことが判明した。
さらに、後には、甘ったれで照れ屋さんでもあるらしいことが判明した。
なかなか、複雑な心の持ち主の模様。


ほてはまたかしの画とのコラボレーションがこれまた素晴らしい。

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のはらうたの仲間たち、みんな個性的ですてき。
その中で、個人的に、特にいいなあっすてきねえって感じたのは、以下の作品。

p8、かぜみつるさん、「「し」をかくひ」
p34、からすえいぞうさん、「ひかるもの」
p48、うさぎふたごさん、「おしらせ」
p60、いけしずこさん、「えがお」
p70, にじひめこさん、「おいわい」
p94、こぶたはなこさん、「こうきしん」

p104、おけらりょうたさん、「おやすみ」








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「学びとは何かー探究人になるために」 今井むつみ 岩波新書 [読書]

以前、ブログでご紹介させていただいたこともある今井むつみ先生。
今回は先生の著書のご紹介です。


八月には、翻訳された新書「科学が教える、子育て成功への道」が出ましたが、
こちらの本を読んでみるまでに、先に整理しておきたくて。


原点に立ち返り、
学びとは何か、
知識とは何か、
熟達とは何か、
(ほんとうは、生きるとは何か、まで)

夏にかなりの情報を整理したつもりでいたのですが、
また、新たな方々とお話しさせていただく機会をしばしばいただくようになり、
これらのことをもう一度整理したいと考えていました。
まさに生きた知識のシステムを交通整理しておきたいという思いがあり、
急いで読みたくなったのが、こちらの本でした。

さすが、語彙の習得の専門家の著書、ひとつひとつの言葉について丁寧に明確に定義づけられ、
言葉、言語に対して厳格かつ真摯な姿勢がひしひしと感じられました。
記憶を4つの型に分類したり、直観を3パターンに分けて丁寧に説明がなされていたり、
タイトル通り、自ら探究人としてお手本を示すように、
これでもかこれでもかと、とことん探究を実践されています。
探究好きな方は、間違いなく喜んでしまうと思います。


記憶とは、
知識とは、
熟達とは、
直観とは、
才能とは、
天才とは、
創造性とは。


学びとは何か、について真正面から挑んでいるとても清々しい作品です。
段階を追って、丁寧に読み解かれており、
これまでの学びに関する知識のシステムを、スッキリと再編成できました。

最終章の"探究人を育てる"
の内容に関しても、これまでの自身の体験から、感じていたことではあるのですが、
著者のお考えに全く同感します。
せめて、最終章だけでも、子育て中の方に、ぜひ読んで頂きたいです。



ほんとうの知識とは、ほんとうの学びとは、何か、
改めて問い直したい人におすすめの書です。

文章も、内容の構成も美しくシンプルです。
理解しやすいように工夫がなされているので、サッと読める良書だと思います。
すでに探究人だよという方、これから探究人にという方、
探Q舎に興味あり、という方におすすめです。



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■知識を事実と捉えてしまっている人々が多い。
覚えた事実の量を評価するようなテスト文化の影響は否定できないとのこと。

知識は常に変化する。生きた知識のシステム。
直観と批判的思考による熟慮との両輪として働かせていくことが重要。

■探究人を育てる
・知識は自分で発見するもの。
使うことで身体の一部にするもの。
様々な現象に対して、なぜ?と問い、自分から答えを求めていく姿勢。
これは、幼児期から育てられる。
これは、知識は教えてもらうものではなく、自分で発見するもの、という認識につながるから。
子どもは生まれながらに、自分で知識を発見するようにできている。

・親も探究人であること。
子どもが探究人であるためには、親も探究人となることが欠かせない。
小さい子どもほど親の価値観に敏感であるから、親の影響力は大きい。


■発達心理学でZPD (Zone of Proximal Development)という概念
レフ・ヴィゴッキー (ロシアの心理学者)

誤ったスキーマの修正をしつつ、いまよりも少し発達のレベルの高いところに登って行く。
子どもが自分のスキーマがおかしいことに気づく状況を設定する。
自分のスキーマが誤っていることに気づき、自分で修正することができたら、
その喜びと感動は、テストで良い点を取ってお小遣いをもらう比ではないはずだ。

この経験が学びの意欲へつながる。
子どもが自分で発見し、自分で進化できるような状況を設定することが親や教師に求められる。

■主体的な学びの本来の姿
それは、知識の構築、創造である。
生きた知識の学びは、母国語習得のときにだれもがおこなっている。


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